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教育の未来
2024.05.30
ゲームと勉強という言葉を聞いてどんなイメージを持つだろうか。ゲームは楽しくてついやってしまうもの、勉強はなんとなく後回しにしてしまうもの、そんな人が多いのではないだろうか。
「ついゲームをやってしまう」という情緒に訴えかけて学びを促すゲーミフィケーションの新たなアプローチを取材した。
教育のベネッセとゲーミフィケーション事業を展開するセガ エックスディーが共同開発し、ゲーム型英語学習アプリ「リズダム」を2024年3月にリリースした。リズダム開発プロジェクトチームの石田洋輔さん、杉 浩輝さん(ともにベネッセ)、荒井登さん(セガ エックスディー)にお話を伺った。
左から、セガ エックスディーの荒井さん、ベネッセの杉さん、石田さん
リズダムは、一般的なゲーム型学習アプリと異なり、リズムゲームと英語学習が分かれたパートとして構成されている。リズムゲームのパートには英語学習の要素はなく、ゲーム自体を楽しめるようになっている。英語学習のパートでは、短時間で学習に取り組むことができたり、自分の英語レベルを可視化できたりと、英語学習を継続する工夫が随所にほどこされている。
実際のリズダムの画面。トップ画面から英語学習であるキャラ育成とリズムゲームを選択できる。
英語学習画面。英単語と英文法から学習したい分野を選択できる。学習を繰り返すことで自分の英語のレベルや定着度が可視化できる。
育成したキャラクターが、夢の世界で敵を倒すという設定のリズムゲームの画面。
リズダムは、自分の現時点のレベルに合わせて学習が提案され、幅広い層が英語を学べるアプリだが、なぜ英語学習とゲームを分離させているのか。勉強が嫌いな人からしたら、リズムゲームばかりをプレイしてしまい英語学習に結びつかないのではないかと疑問が浮かんだ。このことについて開発者の皆さんに問いかけると、プレーヤーをどれだけスムーズに学習へ入り込ませるかが考え抜かれていた。
英語学習のハードルとして、単語を覚えるために繰り返し学習をしなければならないことがあげられる。リズダムでは、リズムゲームの繰り返し遊びたくなる「反復性」に英語学習と共通点を見出し、自発的に繰り返しやりたくなる要素を英語学習に取り込もうと研究されている。
ここで鍵となるのが主人公のキャラクターだ。英語学習をすることでキャラクターのレベルが上がり、リズムゲームのスコアに反映されていく。英語学習をし、リズムゲームを楽しみ、キャラクターのレベルアップをするためにまた英語学習をする。反復を楽しいと思えるこのサイクルを生み出すことで「気づいたら英語学習をしている」を実現した。その上でリズムゲームに学習要素を入れなかったのは、学習のハードルを下げることが目的だったからだそうだ。
「英検®1級の人が英検®5級の人より、リズムゲームのスコアが高くなるという訳ではないんです。その人の実力を基準にして新たな知識を身につけていくことでスコアがあがる仕組みになっているので、小学生と大学生でも競い合える設計になっています」と開発者の石田さんは語る。
ゲームと勉強を融合する形も考えていたが、勉強ができないとゲームを楽しむことができないという形にはしたくなかった。「本当に学習とゲームを切り離していいのか」と社内で議論を重ねたが、英語のレベルに関係なく英語学習へのハードルを下げることで学習の場を作り出すことに狙いがあったことから、リズダムの開発に挑戦した。ゲームとしてのおもしろさを追及することで勉強が好きな人だけでなく、ゲームが好きな人や勉強が好きではない人も学習の場に集まってこられるようにしたいという思いがあった。
20年近く前からゲームと学習を融合させる取り組みは進んでいたが、子どものゲーム時間が増える一方で学習時間が減っているという問題に対して、リズダムのようなアプローチ方法は新たな取り組みの一つだ。
※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。このコンテンツは、公益財団法人 日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。
ゲーミフィケーションは、ゲームの面白さや仕組みがもたらす継続性や夢中になってしまうといった情緒的な力をゲーム以外の活動に利用することで社会の課題を解決するアプローチ方法として、企業研修や学校教育の場でも取り入れられている。ゲーミフィケーションを活用することでどのようなことが実現できるのだろうか?
「ゲーミフィケーションは、何かを知るきっかけを作り出すことができると思っています。何も知らない状態だと世界は広がっていかないけれど、ゲーミフィケーションで少しのきっかけを作って、そこから好きなことを見つけて学び続けてくれたら嬉しいです」と開発者の一人である杉さんは話す。
学びをもっと身近なものにするために、もっと楽しくするために、ゲーミフィケーションというアプローチから取り組みを行っているのはどんな思いがあるからなのだろうか。ゲーム開発者の荒井さんはこう語ってくれた。
「“つまらない”と思っていた勉強を、ゲームが楽しくて頑張ってみたら、少しできるようになった、できるようになるともっと学びたくなって…というサイクルが回ることが学びの理想です。子どもの時に“学ぶことって実は楽しい”と思えたら将来の可能性を大きく広げることができます。勉強することが目的ではない。壮大だけど、リズダムのような、ゲーミフィケーションを活用したサービスを通じてその人の夢のきっかけを作れたら嬉しいです」。
学びの形が多様化する中で学習へのアプローチ方法も増え、模索が続いている。子どもたちの成長を支える取り組みがまた一つ、開かれた。
私は卒業後、教員になろうと思っている。やはり、子どもたちには多くのことに興味を持ってほしいし、それがどんなに楽しいことであるかを伝えたいと感じている。一方で学びの場は学校だけではなく、その子にとっての学びの場は家族との時間かもしれないし、ゲームをする時間かもしれない。学びが発生する場が増えていくことで学ぶことが楽しいと気づく子どもたちが増えてくれたら嬉しい。同時に、私も学びの入り口を作れる教員になりたいと、また一つ理想の教師像が見えた気がする。
取材・編集/澁澤唯奈・居倉優菜・大内涼葉
※この記事はセガ エックスディーからの取材依頼により、edumotto編集部が本サイトの編集方針に沿って取材を行ったものです。特定の企業のサービスや商品等を扱っておりますが、それらを推奨もしくは告知することを意図したものではありません。
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