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第2回 「校則」校則ってなんだろう?校則との向き合い方〜伊藤秀樹先生にインタビュー〜 前編

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こんにちは!編集チームの中込と飯島です。

What Do You Think?では、教育に関するニュースやトピックを取り上げ、学芸大⽣を中⼼に、さまざまな⽴場の⽅の意⾒や考えについて紹介しています。

前回のWhat Do You Think?では、学芸大生に校則に関するアンケート調査を行いました。「あって良かった」と思う校則がある一方で、特に身だしなみに関する校則について、疑問を抱いている学生が多くいることが明らかになりました。

第1回「校則」学芸大生に緊急アンケート!校則って守るもの?縛るもの?

そして、前回の記事でも取り上げられたブラック校則。行き過ぎた校則が問題となるなか、2022年4月から都立高校ではブラック校則5項目が撤廃されることになりました。

今回は、東京学芸大学の伊藤秀樹先生に、ご専門である教育社会学の観点を踏まえて、校則のシステムやあり方、そして学校の先生としての向き合い方についてお話を伺うことができました。

前編では、校則の意義や仕組み、身だしなみの校則がなぜ存在するのかについて、後編では、校則を変えていくためにはどうしたらよいのか、これからの校則のあり方について取り上げています。

一緒に校則について考えていきましょう!

校則ってなんだろう

中込:前回のアンケート調査から、学校によって校則の内容がさまざまであることが分かったのですが、それはなぜなのでしょうか。

伊藤先生(以下敬称略):校則は、生徒指導に大きく関わっていて、その一環として文部科学省から出されている『生徒指導提要』という生徒指導の基本書があります。そこには、

「校則について定める法令の規定は特にありませんが、判例では、学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的範囲内において校則を制定し、児童生徒の行動などに一定の制限を課することができ、校則を制定する権限は、学校運営の責任者である校長にあるとされています。」(引用:生徒指導提要,第7章,第1節 校則,1.校則の根拠法令)

と記されています。つまり、校則とは、国や教育委員会が決めているものではなく、その決定権は校長先生にあって、基本的には学校側が決めています。その地域の実情や学校の立ち位置、校風などに合わせて校則を決めるため、学校ごとに異なるのです。

地域によって、厳しいところもあれば緩いところもあり、もちろん、小学校や中学校、高校によっても変わってきます。たとえば、小学校の場合、髪の毛が茶色であっても特に何も言われないけれど、中学校や高校では指導の対象になったり、校則で禁止されていたりすると思います。また、不要なものを持ってきてはいけないといった小学校や中学校での校則も、高校ではロッカーがあるためにそういった校則がない場合が多いです。さらに、このような学校種による違いだけでなく、同じ学校種の中でも異なる校則が定められている場合があります。ちなみに、時間割や休み時間も校則の一部なので、学校によって異なるのですよ。

身だしなみの校則があるワケ

中込:身だしなみに関する校則への不満が多くありましたが、どうして身だしなみの校則ができたのでしょうか。

伊藤:その理由は大きく2つあると考えられます。まず1つ目は、「服装の乱れは、心の乱れ」という考え方が影響しているためです。1970年から1980年代にかけて校内暴力が非常に増加した時期がありました。そのなかで、いわゆる管理教育と呼ばれるような、学校の荒れを防止するために校則で厳しく取り締まっていこう、といった考え方が先生たちの間で広まっていきました。つまり、身だしなみの校則ができた背景として、服装の乱れは学校の荒れにつながるから、校則によって服装の自由を制限しようという流れになったということが考えられます。

次に、学校は、その地域からの目を気にしなくてはならないため、ということが考えられます。髪の毛が茶色だったり、制服を過度に着崩していたり、買い食いや歩きスマホをしている様子などを地域の方々が見ると、「あの学校はダメだな」というような印象を持ってしまいます。そうすると、学校の評判が下がり、地域からクレームをもらいやすくなったり、職場体験など地域と関わる行事に協力してもらえなくなったりするかもしれません。また、高校の場合は、就職活動にも影響が出てしまいます。こういった理由で、身だしなみの校則を定める必要が生まれたのではないのでしょうか。

ブラック校則をはじめとする校則の問題は、学校だけに原因があると考えられがちですが、厳しい・おかしい校則がある原因の一部には、社会の考え方が影響しているともいえます。学校が地域社会に受け入れてもらうために、世間からの意見や考え方を反映させて、身だしなみの校則が構築されている面もあるためです。学校内部だけの問題として捉えるのではなく、社会全体の考え方も変えていく必要があるのだと思います。

校則の改訂に働きかけていくためにはどうしたらいい?

飯島:校則を見直す取り組みについて、実際に校則を変えることができたという学校がある一方で、話し合いをしたとしても変更に至らなかったという学校が多く見られる印象を受けたのですが、なぜ校則を変えることは難しいのでしょうか。

伊藤:まず、校則の決定権が校長、つまり学校にあるということが最も大きな理由だと思います。校則は、生徒たちだけでつくっていくものではなく、最終的に学校がその校則でよいかどうか判断しなくてはなりません。先生たちの中でも意見はさまざまなので、学校によって校則への取り組み方も変わってきます。また、校則をただ変えていこうとするのではなく、合理的な理由によって校則が定められていることもあるため、校則がある理由についても考える必要があります。たとえば、学校内ではスマホの使用禁止、または授業中は回収するという校則があります。これは、学校では勉強に集中してほしいという願いや友人関係をオンライン上での繋がりだけでなく、オフラインでの繋がりを大切にしてほしいという思いがあります。そういった合理的な理由の場合は、校則は変わりにくいのかなと感じます。

飯島:校則として、変えていく必要があるものとはどんなものがありますか。

伊藤:基本的には、3つのパターンにいずれかに当てはまるものは変えていく必要があるのではないかと思います。まず、①差別や人権侵害になりかねないものです。以前、ニュースでも取り上げられたのですが、とある公立高校で地毛が茶色の生徒が黒色に染め直さないと教室に入れさせない、修学旅行に連れて行かせないと言われ、不登校になってしまったことがありました。もともとの髪色を強制的に変えさせるといったことは、人権侵害にもつながることだと思います。

次に、②誰かに大きな不利益を与えるものです。たとえば、アルバイト禁止の校則があります。この校則は、多くの高校で定められていますが、家庭の経済状況が急変して、学費が払えなくなってしまう場合、アルバイトが禁止されると、その学校に通い続けることができなくなってしまうといった不利益につながることもあります。

最後に、③合理的な理由がないものです。たとえば、髪型の規定で「ツーブロック禁止」がありますが、これに関しては、なぜ禁止なのか説明できる人はほとんどいないのではないのでしょうか。こういった合理的な理由も特にないのに、個人の自由が制約されているものは、校則として相応しくないと思います。

これら3つのパターンが含まれている校則は変えていく必要があると感じます。しかし、生徒の自由よりも安心安全を守らなくてはいけない場面もあるので、その兼ね合いも考えていくべきだと思います。

飯島:実際に、校則という名目ではなくても暗黙の了解や伝統という言葉で、行動が制限されている学校もみられたのですが、このような場合であっても変えていく必要があるのでしょうか。

伊藤:そうですね。基本的には校則と同様に考えてよいと思います。ただ、誰かにとって不利益であったり、差別や侵害につながらないものであれば、その伝統によって学校への愛着が湧いたり、帰属意識を持ったりするというような良い働きかけにつながる場合もあります。そのため、伝統や暗黙の了解をすべてなくす必要はないかと思います。

飯島:伝統だからとただ受け入れるのではなく、その決まりのある意味について考えてみることが大切ですね。

伊藤:そうですね。もちろん、それは生徒だけでなく先生も同様に、その校則がなぜ必要なのか、その根拠を考えておく必要があります。それを説明することが生徒側にとっての学びになります。なかには、学校の都合や事情によって説明できない校則があり、ジレンマが生じるかもしれませんが、そのジレンマに向き合いつつも校則とは何かを問い続け、考え続けていくべきだと思います。

 


いかがでしたか?

校則を変えることが難しいという背景には、校則の決定権が学校にあることや、校則の多くには社会全体の考え方が反映されていることが関係していると分かりました。

しかし、変えていく必要がある校則として3つのパターンが挙げられているように、状況に応じて校則を見直していくことが必要です。

では、実際に校則を変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。また、学校の先生として、どのように校則と向きあっていくことができるのか、さらに考えていきましょう!

後編に続く……

伊藤秀樹

教育学講座 学校教育学分野 准教授

東京都小平市出身。専門は教育社会学で、不登校・非行・子どもの貧困をはじめとした教育問題・社会問題に関する研究や、子どもの「よいところ」に着目した生徒指導についての研究を行ってきた。著書に『高等専修学校における適応と進路』(東信堂)など。博士(教育学)。
2015年に東京学芸大学に着任。学部はA類学校教育、教職大学院は学校教育課題サブプログラムを担当。教職課程の「生徒指導・進路指導の理論と方法」の授業も担当しており、校則について解説している。自分自身は校則も制服もない高校に通っていたため、スーツやネクタイがいまだに苦手。

取材・編集/中込陽菜・飯島風音
イラスト/津波古薫