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edumotto学生メンバーがワークショップを企画しました!【東京学芸大学オープンキャンパス2023】

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7月22日に行われた東京学芸大学オープンキャンパス2023。昨年に引き続きブースを設ける機会に恵まれた私たちedumottoは「edumottoワークショップ~教育系トークカフェwith学芸大生~」と題したイベントを実施しました。来場した高校生やその保護者の方を交え、どのようなワークショップが行われたのか?本記事では当日の模様をはじめ、企画・運営を手がけた学生メンバーの声を前編・後編に分けてお届けします。

“対話”を重視した空間にて

イベントタイトルに冠した「教育系トークカフェ」は、「教育に関する幅広い内容をテーマに、来場者の方とカジュアルに対話する空間」を意図して名付けられました。さまざまな学科・コースに所属するメンバーで構成されたedumottoだからこそ出来ることはなんだろう?そんな問いを出発点にして、イベントの内容を練っていきました。

私たちedumottoメンバーにとってオープンキャンパスは“未来の学芸大生”の声を直接聞くことのできる貴重なチャンス。来場者と私たちが近い距離で相互に話をする場をつくりたいと考え、午前の部は個別の座談会を、午後の部はグループに分かれたディスカッションを実施しました

配布したチラシ。夏らしさを意識して作成しました。

「高校生の声、聞かせてください!」~座談会~

午前の部で開催した座談会には、友達同士で訪れた高校生や親子連れなどが立ち寄っていました。北は北海道から、南は福岡まで。なかには飛行機を乗り継いで1人上京してきたと話す、スーツケースを持った高校生の姿もありました。edumottoメンバー1,2人と来場者一組でグループをつくり、各々のペースで会話がスタート。“逆質問座談会”というコンセプトのもと、私たちからも質問を投げかけつつ来場者の大学生活に関するお悩みに答えていきました。

とあるグループでは、現役高校生が送る学校生活のリアルな話で盛り上がっていました。ひとりの高校生は、「気軽に職員室に入って先生と世間話をしたり、授業の質問ができたりした」と、生徒と先生の距離の近さについて紹介してくれました。「生徒のことを思ってくれるような先生が多いので、自分もそうなりたい」と、教員を志す想いも打ち明けてくれたのでした

一方、別のグループでは保護者から上京後の生活に関する相談が寄せられていました。アパートを借りて一人暮らしをしているメンバーや学生寮で生活しているメンバーが、暮らし方や費用について語りました。

他にも、A類とB類の違い、東京や学芸大学周辺のおすすめスポットなど、さまざまな話題があがっていました。思わず話し込んでしまい、午前の部の終了時間を30分以上オーバーしてしまったグループもあったほどです。

個性豊かな回答が集合!~特設アンケートコーナー~

イベントを実施した教室前の廊下や教室内には特設アンケートコーナーを設置。3つの質問を用意し、付箋に書く形で答えてもらいました。教室を移動する際に足を止めてペンを手にとってくれる人もいました。

思わずクスリと笑ってしまうような一風変わったものから、地域性が色濃く反映されたものまで多岐にわたる回答がみられました。

Q1. 印象に残っている先生、面白い先生は?
中学社会のおじちゃん先生が授業でサリーを着ていた
生徒が授業を進めて、先生が最後にまとめる授業をしていた小学校の時の先生
手書きのプリントを作ってくれた歴史の先生 …

Q2. 授業に求めるもの、参加したいと思う授業は?
先生が予習をしないで、生徒と同じ目線で話し合う授業
座って受けるだけでなく、実際にどう使えるのか実践したりできる授業
間違えてもいいから、色々な意見が出る授業 …

Q3. うちの学校ココが変わってる!ここがローカル!
高校一年生の体育の時間に、フラフープ、縄跳び、ラジオ体操しかしない
学校の棟の名前が「森のくまさん棟」
校歌に「富士」が入っている(山梨の学校)…

「あなたが先生だったら、どうする?」~ディスカッション~

将来、先生(子どもを教える/支援するおとな)として子どもたちに向き合うとき、どのような視点が必要なのでしょうか。午後の部では、edumottoで公開されている記事を題材としてディスカッションを実施しました。第1部、第2部に分け、それぞれ異なるテーマを設けました。高校生と保護者、ファシリテーターのedumottoメンバーで構成されたグループごとに話し合い、最後には全体へ共有する時間も作りました。

<第1部>「女の子なのにピンクじゃないんだ」のことばから考えるジェンダー

ランドセルの色をテーマにした記事「“好きな色”を選ぶことができる社会へ」を扱いました。1つの場面の背景を紐解き、先生としてどのような環境作りを行うかについて議論していきました。

<場面> 小学校低学年の学級で、音楽の授業で使うピアノハーモニカを購入することに。選べる色はピンクと水色の2色があった。女の子の多くはピンクを選んだが、1人だけ水色を選んだ女の子がいた。その女の子に対して、ある男の子が「女の子なのにピンクじゃないんだ」と一言。それを聞いた女の子はなんだかもやもや…

<問いと主な意見>
Q1.
① なぜ男の子はその発言をしたのだろう?
“女の子はピンクを選ぶものだ”という認識から、悪気のない率直な感想として言ったのでは
ひとりだけ違う色を選んだことへの純粋な驚きがことばに表れたのかもしれない
駅や商業施設の“女性トイレは赤、男性トイレは青”の区分が色と性別のイメージを結び付けているのでは

② また、なぜ女の子はもやもやした気持ちになったのだろう?
好きな色を選んだだけなのに、それを否定されたような気がしたのではないか
ほかの女の子と選んだ色がちがうことに本人もジレンマを抱えていたのかも。その場合は、男の子のことばがより鋭く感じられてしまいそう
「女の子“なのに”」に違和感があったのでは。その子の性自認にも関係しそう

③ 当事者の視点で想像してみたとき、どちらの立場に共感しますか?
どちらの立場にも共感できる部分がある(一番多い意見でした)
低学年は、自分の気持ちを正確に認識することやそれを伝える語彙が十分でないことも考えられる。自分の意見を形成する過程にいるのでは

Q2. 学校や先生はどのようなスタンスであるのが望ましいと思いますか?それを叶えるためにどのように行動をとりますか?
まずは女の子の孤立感のケアを。「好きな色を選んでいいんだよ」と伝える
(女性教員だったら)「私も水色好きだよ」と共感する
中立な立場をとり、男の子の考えも尊重したい
みんなで考えるチャンスととらえ、教室全体で考えるきっかけにできれば

非常に繊細なテーマを扱った第1部。グループごとにじっくりと意見を出し合う様子が見られました。「どちらの考えも否定することなく、素直に受けとめられるおとなになりたい」と話す教員志望の高校生。鍵盤ハーモニカにデコレーションを施し、色にとらわれない子どもそれぞれの個性を引き出す図工の授業を提案してくれた高校生もいました。

<第2部>スマホやタブレットの利用ルールをつくってみよう

What do you think?コーナーの記事「第1回「校則」学芸大生に緊急アンケート!校則って守るもの?縛るもの?」を端として議論しました。コロナ禍を経て急速に進行したGIGAスクール構想を題材として、スマートフォンやタブレットの使用に焦点を当てた問いを設定しました。

<問いと主な意見>
Q1. スマートフォンの使用や持ち込みについて、皆さんの学校ではどんな校則がありますか?
登下校中も含め電源はオフにする
まったく定められていない。授業中も調べ学習などで積極的に活用している。
最寄りの駅に着いたらオフに。昼休みは用途を限定して使用可

Q2. 皆さんが先生だったら、どんなスマートフォン・タブレットの使用ルールを設けますか?                                         スマートフォンの持ち込みは禁止にし、配布されるタブレットのみ使用可にする(小学校)
持ち込みは許可にするが下校時まで学校側で預かる(中学校)
生徒の自律を促すためにあえて校則を設けない(高校)
試験時は回収するか電源をオフにして机の上に置くようにする(高校)

校則として明記されているか否か、またその内容は、自治体や学校、教員の指導方針によって大きく分かれていました。Google Classroomでの資料共有や授業内での調べ学習など、学級活動で日常的に活用している学校には制限を設けていない場合が多いようでした。自身の学校との違いを知り、驚きの声を上げる高校生も少なくありませんでした

使用ルールについては、校種や子どもの発達段階に応じて議論を進めたグループが多く見られました。端末活用が奨励される時代背景と、授業中のゲームや動画試聴、SNSのトラブルといった課題解決との両立を目指したルールが数多く提案されていました。

「先生や学校が設けるルールには、児童生徒への想いが込められているのではないか。設定した意図を伝えた上で、子どもたちが積極的に守っていけるような関係性づくりが望ましい」「保護者の目線から求められるものがありそうだ」といった意見も印象的でした。

編集後記

滞りなく進行し、すべてのプログラムを無事に終えることができた今回のワークショップ。ご来場いただいたみなさん、ありがとうございました!みなさんとともに、この空間ならではの体験や学びを生み出すことができたと思います。後編では、運営に携わった私たちメンバーの感想や企画立案の裏話をお届けします。お楽しみに!

取材・編集/入戸野舞耶、石川智治、伊波瑠音