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What Do You Think?
2024.04.26
2月26日から4日間にかけて、能登半島地震の被災地で支援活動に参加した。災害から2か月経ってもなお生活の再建が難しい要因の一つとして、自治体による災害廃棄物の処理が追い付いていない現実があるのではないかと考え、出向いた。私は小学校教諭を目指している。こうした困難な社会問題をどう理解して子どもたちに伝えていけば良いのか、現場で考えたことをリポートしたい。
2月27日、石川県七尾市。ボランティアセンターに集まった私たちは、郊外の古い街並みが残る地区に向かった。農家の蔵の白壁や土壁がひび割れて、はがれ落ちていた。元日までの平穏な日々が崩れ落ちた現場を目の当たりにして、私は言葉を失った。私たちボランティアはハンマーを手に、崩れ落ちた壁をハンマーで叩いて壊していった。黒く光る立派な屋根瓦も落ちて割れていた。それらを軽トラに乗せていくとすぐに山積みになった。
軽トラが向かったのは災害廃棄物の仮置き場だ。住民らが設けたもので、既にタンスやテーブルが山積みとなっていた。ぬかるんだ地面には大小さまざまなコンテナが敷き詰められ、使えなくなった蛍光灯や家電製品が仕分けられている。
住民が集積場に持っていく前に設置した仮置き場 七尾市
七尾市では地震と津波によって甚大な被害が発生している。私が被災地に入った2024年2月26日現在では359戸の住宅が全壊、2654戸が半壊と伝えられていた。住まいの再建には、使えなくなった家財や住居の部材などを処分しなければならない。市は廃棄物を10項目に分別して集積場に持ち込むように呼びかけている。壊れた住宅からの運び出しは困難が予想されたため、分別は市側でも極力大まかな仕分けにしたと言う。例えば可燃粗大ゴミは木製とプラスチック製を問わない。ガラス、陶磁器、瓦は分別せずに出せるようになっている。
しかし、量がとてつもなく多い。30代の男性は「災害廃棄物を運び出すだけでも相当な時間がかかる。そこから分別するのはもっと手間がかかる」と話し、疲労感をにじませた。
3月末時点で七尾市が指定した仮置き場は3か所。当初は能登香島駐車場のみとなっていたが、1か所では足りず、住民の要望によって、2月末と3月に1箇所ずつ設置された。集積場の開設時間は午前9時から午後3時までだが、主要道路が崩壊しているために迂回しなければならず、迂回路も渋滞している。ボランティアで来ていた男性は、「仮置き場に並んだが、受付に間に合わなかったのですべて積みなおして持ち帰った。開設時間が短い」と困惑していた。
なぜ、このような問題が生じているのか。七尾市役所の職員の方々に聞いてみた。
分別は廃棄物の回収を依頼している業界の決まりに基づいている。分別されていなければ回収先の事業者が作業員を投入して仕分ける必要があり、必然的に処分コストが高くなる。その費用は税金で支払うことになるが、七尾市も珠洲市や輪島市のように水道や道路などのインフラが大打撃を受けている。
「国からの支援を受けたとしても復旧には多大な費用が必要で、財政を圧迫するのは間違いない。将来のことを考えると、少しでも節約が必要なのです」。そう語る職員さんも被災者の一人だった。能登の冬は日暮れが早い。廃棄物には割れたガラスや折れた木々も混ざっていて、薄暗い中でそれを扱うのは危ない。職員の健康管理と危険回避のために、開設時間は15時までになったという。それでも集積場の職員さんは自宅の復旧を後回しにして、休日返上で働き続けている。
13年前の3月11日、小学校の入学前だった筆者は茨城県のひたちなか市で東日本大震災を経験した。停電や断水で家には住めず、車中泊を続けた。近所には東海村の原発がある。両親は福島での事故を聞き、東海村は本当に大丈夫なのかと日々心配しながら生活していた。東北の親戚は津波に流されて亡くなり、さらに甚大な被害に見舞われた。そんな中、近所の方や親族がお互いに支え合っていたのを、幼いながらに覚えている。
地震・噴火・台風といった災害は、いつ、誰にでも起こりうるということを私はあの震災で体感した。そして今回、被災地支援に参加して分かったのは、みんなが困っているということだ。被災した住民の生活を支える行政の職員も被災者であり、支え、支えられながら暮らしている。災害廃棄物の問題は、それぞれが手一杯の状況の中で生じた困りごとなのだ。
日本のどこでも、さまざまな災害が発生する(茨城県ひたちなか市、2018.8.31撮影)
私は中学や高校で公共政策を学んだ。しかし、能登半島の人たちが直面した問題は、私が学んだ知識だけでは解決できないと思った。数年後、私は学校の教員として子どもたちへの授業を担うことになる。簡単に解決できない社会のジレンマを伝え、困難な状況に直面した時に自分たちには何ができるかを考えて行動できるような力を育てていくことが、私の役目なのではないかと思う。
取材・編集/久慈浩聖
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