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「TEAM 未来の図書館をつくろう。」のメンバーにインタビューしてみました~その②~ NO.2

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TEAM 未来の図書室をつくろう。

教育のICT化が進み、電子的なコンテンツが増える中、学校において図書室はどのような役割をはたしていけるのか。教科教育におけるデジタル書籍の活用方法のモデルを開発しつつ、探究学習などの児童生徒の学習成果をデジタルデータ化し、アーカイブしていくプラットフォームを開発していきます。

「TEAM 未来の図書館をつくろう。」には、学校現場の教員だけでなく、多くの方が参画しています。前回は、ポプラ社から参画している方からお話を伺いましたが、今回は東京学芸大学大学学術情報課課長の高橋菜奈子さんにインタビューしました。

このプロジェクト、「TEAM 未来の図書館をつくろう。」に参画しようと思った背景やいきさつを教えてください。

高橋さん(以下敬称略):私は前提として、東京学芸大学のExplayground(※)の活動に参加していて、そこで「図書館と知の未来」を考える活動をしています。 以前より、大学図書館としての未来像と学校図書館の未来像とをうまく接続していきたいなと思っていたところです。だから、「未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト」の中で、是が非でも未来の図書館のことを扱ってほしいという気持ちがありました。「未来の学校」にはきっと「未来の学校図書館」が必要でしょう、という思いを強く持っています。
学校図書館は、単に本が置いてある部屋ということではなく、読書センター、情報センター、学習センターの3つの機能を持っているといわれていて、そのことは文科省のホームページにも載っています。 この3つの機能を軸にしながら、未来に向けてどういう風にしていくことが学校や生徒にとっていいことなのか、現場ではGIGAスクール構想も始まっており、そんな中で、学校図書館は何ができるのかを考えることが大事なのかなと思っていて、このプロジェクトを立ち上げてほしい、参加したいと手を挙げさせていただきました。

(※)Explayground・・・東京学芸大学が推進するプロジェクト。産官学民からなる多様な参加者が主体的に自分の「好き」「面白い」「課題」を持ち込み、 共感者とラボと呼ばれるプロジェクトを形成。「遊びから生まれる学び」に代表されるように、 何かに没頭する中から得る学びを大切にした、新しい公教育のモデル形成を目指す。

このワークキンググループの研究について、期待していることはどんなところでしょうか。

高橋:読書センターとしては、学校司書さんたちが今までも取り組んできていたわけですが、今回、ポプラ社さんの電子書籍を利用することが出来るようになりました。さらには、小学校の先生方が電子書籍を授業で活用するという実践研究が進んでいますので、学校図書館を活用した授業づくりの未来形ということで期待しています。

情報センター・学習センターとしては、これまた学校司書さんたちが取り組んできていたわけですが、今まではおそらく、百科事典をうまく使いこなすとか、調べ学習の役に立つ本を提供することが求められていたかと思います。しかし、これからは紙の百科事典だけではすまない時代になってきますし、学習そのものが端末を使って行うように変わっていく中で、竹早の小中の図書館(メディアセンター)もそういうものに対してどうアプローチできるかということを考えていく段階なんだろうなと思っています。

私としては、第1歩として図書館のデジタルプラットホームになるようなものを作っていければいいなと思っています。例えば、大学図書館ではウェブサイトがないことはまずありえないんですけれど、学校の図書館には児童生徒に使ってもらうためのウェブサイトはそれほど普及していないらしいのですよね。児童生徒も先生方も授業の最初にちょっと調べてみようと思ったときに開く場所、まさしく情報センター・学習センターしてのウェブサイトが作れるといいのではないかと思っています。

なるほど。実は、前回お話を伺ったポプラ社の松田さん、齋木さんも同じようなお話をされていて、飛行場のハブ空港のような、学びを中継する中心地になるような場所が未来の図書館のイメージです、と話されていました。

高橋:まさしくその通りだと思いますね。そのあたりの方向感は共有できているので企業さんも入っていただいて、一緒に研究できるということは心強いです。

高橋課長が考える「未来の学校図書館」はどういうイメージでしょうか。

高橋:学校図書館に置いてある本を読みましょうという読書教育もすごく大事ですが、それが紙の形でもいいし、タブレットを持って電子書籍を読んでもいいし、あるいはウェブ上に公開されているようなコンテンツもいいですね。また、気軽に図書館に来ているのだけれど、実は図書館の本が目的でないというようなことも普通にあっていいのかな、と思います。何か調べたいなと思ったときに、まず一番に図書館にいってみようと思える場所、ウェブ上でこう調べればいい情報が簡単に手に入るんだよ、みたいなことも司書の先生に相談できるというのがいいですね。ウェブ上の情報って玉石混淆ですから、そういうものをどうやって使っていくのか、そういうことも含めて学校図書館の中で行われるといいのかなと思っています。

今の大学生は、図書館を情報センターとして活用しているというのが一般的なのでしょうか。また、大学生が使っているような使い方を小学校や中学校でも目指すということでしょうか。

高橋:大学ではスタンダートなものは紙の本となって書架に並んでいますが、研究面で一番先端のところはデジタルの論文です。学問によって千差万別でしょうが。でも、今は卒業論文を書くために論文を何らかのデータベースで検索しない大学生はいないと思います。この考えをそのまま小学校や中学校へ広げていこうというほど単純ではないですが、もっと簡単なものでいいからちょっとオンラインで調べてみたいなあという経験は、小学生や中学生でも必ず出てくると思うのです。そんな時、どんな情報が適切で、どんな情報は不適切なのか、どんな使い方はOKで何をやってはいけないのか、いろいろな情報に触れる経験の年齢が下がってきています。小さいうちから慣れていけば、高校・大学と段階を踏んで、さらに深い学びにつながるのかなって思っています。

プロジェクトとしてこれから挑戦したいこと、課題はありますか。

高橋:一つは、普及可能な公教育のモデルとなれるかということです。この点については、東京学芸大学附属竹早小学校・中学校は、全国的に見ると、先ほどの3つの機能の進み具合は、ちょうど真ん中、平均ぐらいなのではないかなと思っています。ものすごく先端的なことをやっているわけではないけれども、まあ遅れているわけでもなく、蔵書もそれなりにありますし、学校司書さんも小中1名ずつ配置しているという意味で、中程度なのかなと思っています。だからこそ、我々がやれることは他の学校でも実現可能であり、普及できる未来の学校図書館を描くことができるのではないかと考えています。

もう一つは、これはプロジェクトとしての課題かと思いますが、これからの研究であるデジタルアーカイブをどうやって創っていくかという点です。ポートフォーリオを目的にするのか、成果物をアーカイブして検索できるようにすることを目的にするかで大きく違ってくるかと思います。大学図書館でやっているExplaygroundの活動では、「自分が発信したことを他人が受け止めてそこからさらに何か深めたものがでてくる」という「知の循環」を考えていますが、そこでは成果物をアーカイブし共有し協働的な学びにつなげることが大事です。一方、ポートフォーリオ的な蓄積は、まず第一に子供たちの自分自身の学びの振り返りにつながりますし、教師側がそのデータをもとに指導や支援の評価の研究に役立つ面もあると思いますので、どれを目的にするのかによって大きく違うでしょうね。公開を前提としたコンテンツの保存と共有ということであれば、大学図書館の今までの知見が生かせますが、ポートフォーリオのデータは、必ずしもオープンにできるものばかりではないし、個人という軸で管理していくことは、図書館では手に負えないのではないかと危惧しています。逆にいうと、図書館にこだわる必要もないのかもしれません。図書館の強みはコンテンツに通じていることですから、ICT担当者の力と図書館の力をうまく学校の中で接続させいくことを検討するのがよいかもしれませんね。いずれにせよ、未来の学校全体の中で、学校図書館がどういう役割を果たすのか、そのことを追求していきたいと思っています。

取材を終えて

ありがとうございました。デジタルアーカイブについての方向性はすぐに出せないかもしれませんね。この「TEAM未来の図書館から子供たちに学びを。」ワーキンググループだけでなく、ほかのワーキンググループにも関わることで、まだまだ議論を尽くす必要がありそうです。難しい課題ですが、このような議論を現場の教員だけでなく、こうして大学や企業の方々と語り合えるのが、このプロジェクトのよさだと改めて感じました。本日は、お忙しい中ありがとうございました。
インタビューした人:彦坂 秀樹(東京学芸大学教育インキュベーションセンター、東京学芸大学附属竹早小学校)

高橋 菜奈子(たかはし ななこ)

東京学芸大学総務部学術情報課(併)情報基盤課 課長。京都府京田辺市出身。関西の小さな町で公立の小中高校に学び、親元を離れて仙台の大学に進学。大学では歴史学を専攻し、そのまま母校の大学図書館に就職した。いくつかの国立大学の図書館および国立情報学研究所を経て、現在は学芸大の附属図書館と情報インフラを担当。学術情報のオープンアクセス・オープンデータの実践に取り組んでいる。