未来の学校 Topics
TEAM「子どもたちの興味が輝く学びの場に。」 中学3年生と向き合う「自分のありたい姿」
2022.08.29
未来の学校 Topics
2021.11.12
学習者にとって学びモチベーションが持ちにくい、自分事化しにくい学習内容において、学習の導入やまとめの段階でゲーミフィケーションを活用することの可能性について実践的に研究開発していきます。
Society5.0に向けた新しい学校システム創りに挑戦していく「未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト」。
学習者にとって学びのモチベーションが持ちにくい、自分ごと化しにくい学習内容において、導入やまとめの段階でゲーミフィケーションを活用できないかを実践的に研究開発していきます。そこで、今回は学びをエンタメ化することに奮闘されている通信教育タンキュークエスト(tanQ株式会社)の滝沢久輝さんにインタビューしました。
滝沢 久輝(たきざわ ひさてる)
tanQ株式会社。”ガクモンで人生を冒険にする”探究型通信教育タンキュークエスト 創業メンバー。教育のエンタメ化(アニメ、マンガ、ゲーム)を通じて、子どもが子どもらしく、ありのままでいられる社会の実現に向けて活動中。東京学芸大学教育イノベーションパートナー。
【SNSリンク】
▼タンキュークエスト https://tanqfamily.com
▼Note https://note.com/takizawa_teru
▼Twitter https://twitter.com/terutakizawa
なぜ「未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト」に参加したのか教えてください。
滝沢さん(以下敬称略):僕たちはタンキュークエストという小学生向けの通信教育サービスに取り組んでいるのですが、なぜやっているかというと僕自身が勉強を大嫌いだったっていう過去があります。
大学生の時に学問の面白さに気づいて「なんでこんなおもしろいことをもっと早く教えてくれなかったんだろう。」っていう想いがありました。それまでの僕は、世界ってつまらないなとか勉強ってつまらないな、もっと激しい言い方をすると人生そのものがつまらないなって思っていたのですが、そんなことないということに学問を通じて気づけた経緯があります。それを、小・中学校の段階でも気づけるようにしたいという想いがありました。
では、そのためにはどうしたらいいのか?小学生のころの自分を振り返って考えてみると、当時の僕はミニ四駆とかポケモンばかりで(笑)やはり勉強は候補にあがってこなかったですね。なので、過去の自分に学問やこの世界のおもしろさを届けようと思ったときに、ミニ四駆やポケモンと戦えるくらいのおもしろいモノにして届けないと絶対に手に取らないだろうなということが問題意識としてあります。小学生は本能的ですよね。「必要だからやる」ではなくて「楽しいからやる」みたいな本能で動いていると思うので、シンプルにエンタメとして楽しいものを学びのなかでも届けないといけないなということを思っています。新しい学校を考えるときに、やはり学びをゲームにするとか、楽しくするとかというプロジェクトは必要だと思い、ゲーミフィケーションを学校のなかにどこまで取り入れることができるのか、学びをゲームにするということをどこまでできるのかということをプロジェクトとしてチャレンジしてみたいと思いました。
教育をゲームでエンタメ化する会社として、子どもたちのどのような資質・能力を高めたいと考えているのか教えてください。
滝沢:実はあまり子どもたちの資質能力を高めるということを考えてはいません。理由が二つあり、一つは、そもそも資質能力を高める以前の問題だと思っていることです。子どもたちは勉強が楽しくないから進んで手に取らないという状況ですよね。そして、手にも取らなかったら何も起きないですよね。だから、僕たちがフォーカスしている課題というのは資質能力を高めることではなくて、まず手に取ってもらうことなのです。勉強あるいはこの世界そのものがつまらないと思っている子どもに「いや結構楽しいよ」「この世界には不思議なこととか、面白いことたくさんあるよ」ということを届けることが一番の目的です。だから、資質能力を高める以前の部分に僕らがフォーカスしているということがあります。
二点目は、資質とか能力はそもそも個人のなかにあるものなのだろうかと僕たちは疑っています。
むしろ、資質能力というのは、自分と他者の間にあるものだと思っています。たとえば「君は素晴らしいね!」と自分のことを評価してくれる人がいたら、その人にとっての自分は能力がある人ということになるわけです。一方で付き合う相手が変わったらガラリと自分の評価が変わって、今度は逆に「君はダメなやつだ」と言われることもあります。つまり、資質とか能力というのは“個人に備わっているもの”というよりも、人と人の間で起きる“社会現象”だと思っています。
ですので、僕らが運営しているタンキュークエスト(通信教育サービス)では、チームもしくは親子でチャレンジするということを大切にしています。どんな人にも必ず存在する意味と価値があるという前提に立って、お互いが関わり合うなかで良いところを見つけ合うトライをしているのです。資質・能力が社会現象だとしたときに、結局は人と人とがお互いを生かし合うことが本質ですから。ですので、チームに参加したときに自分には役割があるということを感じ合うために「ロールプレイラーニング」というものを試しています。チームのなかでの自分の働きというものを意識しながらお互いやり取りするということをやっています。だから、資質能力を高めるというよりもチームでお互いを生かし合うという視点と雰囲気を体で感じてほしいという想いがあります。こういった考え方や手法を今回のプロジェクトの中で学校に提案していきたいと思っています。
ゲームで教育をエンタメ化した先に、どのような「未来の学校」をイメージしているのか教えてください。
滝沢:「なんで勉強しないといけないの?」という疑問を抱く子どもたちがいなくなることが実現したい未来の学校のイメージですね。
公教育の意義は「日本の中のどんな環境の中に生まれてもアクセスできる教育の場」という点にあると思っています。つまり、すべての子どものためにあるものということですね。
一方で、学校での勉強の時間が好きな人はどれほどいるのか?と考えたときに、多分「勉強好き」と答える子どもは少数派ではないかと思っています。
今、不登校とかが年々増えている傾向にあるというのは、それを表しているのかなと思っています。もしも今、学校の勉強をつまらないとかしんどいと感じている子どもが大多数だとしたら、そういう子どもたちに最適化した教育の方が公教育としてはいいのではないのか?というすごくシンプルな疑問があります。
では、すべての子どもたちが手にとってくれる教育はどうあるべきか考えたときに、すべての子どもが手に取っているものを参考にするしかないと思っていまして、やはりエンタメの要素が重要になってきます。勉強するときはいつも「なぜ勉強しているのだろう」と考えていたのですが、ミニ四駆とかポケモンとかをしているときには「何で俺はこれをやっているんだ」なんて一度も考えたことがなかったですよね。エンタメとか遊びって何かのためにやるのではないですよね。そのもの自体がおもしろいからやっている。学ぶこと自体がエンタメ化しないと「なんで勉強しないといけないの?」と思う子がずっといつづける社会になると思うので、エンタメの要素を積極的に公教育のなかに取り入れて「なんで勉強しないといけないの?」という疑問を抱くことがなくなればいいなと思っています。
すべての子どもたちが学びを手にとってくれるために、エンタメとして楽しいものを学びのなかで届けようとする滝沢さんの熱い想いを聞くことができました。これからみんなで創る未来の学校は、子どもと先生の好きが学びに変わっていく学校であると良いなと思いました。
インタビューした人:田﨑智憲(未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト事務局/東京学芸大学 修士課程1年)
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