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未来の学校 みんなで創ろう。PROJECT

未来の学校 Topics

未来の学校 みんなで創ろう。とブロック遊び

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―決める側と決める側以外―

 「学校」は常に要望と批判の矢面にさらされて続けている。100人いれば100通りの教育哲学がある。100人いれば100通りの学びがある。そもそも正解など存在するのかどうかもわからないのに、100人が100通りの正解を信じている。
 現代の学校は端的に言えば「公教育を行うための仕組み」である。公教育であるがために100人いたら100人の意見に耳を傾け対応する責任を持つ。「まずいと思うのなら、俺のラーメンを食べてくれなくていいわ!」というわけにはいかない。しかし、100人いたら100人が納得する教育などあるのだろうか。もしあるとして、100人いたら100人が納得する方法でその教育を実際に行うことなどできるだろうか。
 中央教育審議会や教育委員会のような有識者の集団が決めるというやり方は構造上、決める側と決める側以外を生み出し、決められたことに対しての多様な意見が噴出することになる。このやり方では常に「公教育」は、「学校」は要望と批判の矢面にさらされ続けることになる。

―みんなで創る。―

 平成30年9月、国立大学法人東京学芸大学とMistletoe株式会社(現「Mistletoe Japan合同会社」)は「教育環境をデザインし、教育の新しい在り方を社会に提案する。」ことを目的とした連携協定書を締結し、公教育をアップデートするために「Explayground事業」(https://explayground.com/)を協働で開始した。「未来の学校 みんなで創ろう。PROJECT」はこのExplayground事業の一環として行われている。現在、参加している法人は38、連携している教育委員会は2(協力関係にある教育委員会は+3)、そこに東京学芸大学の大学教員、附属竹早学校区の教員全員、さらに、個人で参加する学生(高校生含む)等、総勢で200名を超えるチームである。(図1)

未来の学校プロジェクト 参加法人の規模と事業領域

 公教育をアップデートすることを目的としたExplayground事業の一環として現状の学校を変革し、未来の学校のモデルを提案することを目的にこのプロジェクトを構想し始めたのが令和1年の秋頃。そこから時間をかけてこのチームを形成してきた。(我ながら時間がかかりすぎだと思う。)チーム形成において考えてきたのが前述の「決める側」と「決める側以外」という構造をつくらないようにするにはどうしたらよいのだろうということである。
 試行錯誤をしながら2つのことをポイントして考え、プロジェクトを進める体制を整えてきた。
 一つは「みんなで」である。できる限り多様な人が多様な思いで参加できるようにする。参加する人は誰かが決めた何かをやるのではなく、自分で決めたことを自分でやるということを原則とする。もちろん個人でできることには限界があるので、同じようなやりたいことを持つ参加者がいくつかのチームを構成しているが、チームの中でも決められたことをやるのでなく、自分たちで決めていくことを原則としている。
 もう一つは、PDCAサイクルでなく、OODAループ(※)を意識するということである。具体的な理想の学校像を描き、そこに到達するための総括的な計画をたて、チームを編成して、個別の計画を実行するのではなく、各自が、現状を観察し、迅速に多様な打ち手を打つことを繰り返し、その総体として学校が変革されていくというプロセスを取ろうとしている。
※(PLANDOCHECKACTION)、OODAOBSERVEORIENTDECIDEACT

 現在、多様な参加者のそれぞれのやりたいことを起点に7つのプロジェクト、17のワーキングが動いている。今後もやりたいことが発生すればプロジェクトやワーキングを再編成していく予定である。(図2)

未来の学校プロジェクト「現状のプロジェクトとワーキング」

―「好きに、挑む。」―

 さて、「ただ、やりたいことをみんながやっていて大丈夫なの?」という疑問がわいてくるのは当然である。参加してくださっている方々からも同様の意見が生まれてきた。そこで、現場教員、企業人、教育委員会、大学教員、学生などの多様な参加者が集まってワークショップをしてワイワイガヤガヤ「そもそも未来の学校ってどんなところだ?」を議論した。そして、生まれきたのが今回のプロジェクトのヴィジョン「好きに、挑む。」である。(図3)

 学校とは本来思いっきり「好き」を楽しめる場所であるべきである。ただし、好き勝手にやればいいというわけではなく、主体的にとことん挑んでほしい。そんな思いが「好きに、挑む。」にはこめられている。そして面白いことにこのヴィジョンはこのプロジェクトそのもののヴィジョンとしても意味をなしている。未来の学校の実現に向けて、各参加者がやりたいことを自分で決めてプロジェクトを推進していく、このプロジェクト自体が参加者の「好きに、挑む。」場である。

―「未来の学校 みんなで創ろう。」とブロック遊び―

 ブロック遊びには2通りの遊び方がある。一つは、飛行機をつくるぞ!と決めて、部品を集めてきて、飛行機を作っていく遊び方。もう一つはよくわかんないけど、ブロックをくっつけるのが面白いから、いろいろくっつけているうちに、なんかだかわからないけど飛行機ができあがる遊び方。イノベーションは圧倒的に後者の遊び方のほうが生まれやすい。本プロジェクトは後者の遊び方をしていきたいと考えている。
 「未来の学校をみんなで創るんだ」「未来の学校とは『好きに、挑む。』場所なんだ」の2つを心に刻み、各参加者がそれぞれの「好き」に挑んでいく、その先に「未来の学校」が見えてくるのではないか。

 計画を立てるのが嫌いで、今が面白ければよいという個人的な性格に起因する部分も大いにあるとは思うが、本プロジェクトはこのような考え方のもとみんなの「好き」が集まることで動き出している。今後、edumottoのこのコーナーでは、こんな酔狂なプロジェクトに主体的に参加してくださっている各参加者の「好き」について、それがどのように実現されていくかについての記事を発信していきたいと考えている。

 本プロジェクトは継続して参加したい人を募集しています。話を聞いてみたいと思ったら、ご連絡ください。(icb-expg@u-gakugei.ac.jp

 


〈筆者〉
金子嘉宏(かねこよしひろ)/東京学芸大学教育インキュベーションセンター教授。1969年生まれ。東京大学卒。専門分野は社会心理学、教育支援協働学。一般社団法人東京学芸大Explayground推進機構事務局長、一般社団法人STEAM JAPAN理事、一般社団法人教育支援人材認証協会理事、NPO法人東京学芸大こども未来研究所理事、日本教育支援協働学会理事を兼任。こども、教育関連の企業に勤めながら、「遊び」についての産学共同研究を数多く実践。現職にて、企業と大学、学校をつなぐ協働の推進、新しい「学びの場」の研究開発、普及に取り組んでいる。