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AIを使って「楽しい授業」にするために 〜企業が抱く学校教育への思いとは〜

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いま、学校の授業でAIを使うことを、私たちはどのように考えればよいのだろうか。

現在文部科学省を中心に生成AIの利活用に関する分析が進められており、さまざまな実証事例が報告されている。一方で、AIを用いることへの懸念の声もある。子どもが「すぐAIに聞く」ことでの思考力の低下が不安視されている。

そのような中、AIを用いた学習ツールをつくる「企業」はどんな思いで開発をし、どんな願いを教師や子どもに抱いているのか。今回は、テレビ番組やニュースサイトなどさまざまなコンテンツを制作・発信しているTBSホールディングスを取材した。TBSが開発した「AI for School」とは、いったいどのような学習ツールなのだろうか。

取材・編集/平川璃空、蜂須賀悠

どうして「ニュースを選んでくれるAI」を作ったのか

実際に「AI for School」を体験した

パソコンの画面に映し出されているのは「AI for School」の操作画面だ。画面上のホワイトボードに貼られた付箋には、授業中に子ども自身が考えたことを書き込むことができる。するとAIが付箋に書かれた内容に基づき、関連するニュースを提示してくれる仕様になっている。

学校の授業ではどのように活用されるのだろうか。実際に、社会科の自然災害に関する学習で使われたケースでは、まず子どもが付箋に「津波」「予想できない」など知っていることを入力する。すると関連ニュースがいくつか表示され、ある子どもは「SNSで流れる災害デマ」のニュースに興味を持った。そして、「デマ情報はなぜ流れるのか、どうやって見抜くのか」の探究を始めたという。

「毎日、僕ら全国の記者が報道しているんですが、そのニュースが未来の子どもたちの教育に資するとなったら、こんな素敵なことはないというか」
そう話すのは、開発に携わっている清水徹郎さんだ。このツールは、文部科学省が昨年度実施した生成AIに関する実証研究事業がきっかけとなり、開発を始めたという。同じく開発メンバーの田中瑞人さんは、TBSのニュースサイト「NEWS DIG」が子どもたちの学びに役立つと確信を持った。そこで教科書の内容と膨大なニュースをつなぎ合わせる、すなわち「ニュースを選んでくれるAI」が作られ、それを組み込んだ学習ツール「AI for School」が開発された。

これは私たちが日常的に使用する「AI」やリコメンド機能と何が違うのか。その違いは「面白くする」というキーワードに隠されている。

「教えるAI」ではなく「面白くするAI」に

現在、多くの人が「AI」と聞いて思い浮かべるのは、質問を会話形式で入力すると回答が返ってくるサービスではないだろうか。これは便利である一方、学習の際に子どもが使用するとすぐに正解を聞いてしまい、結果的に「答えを教えるAI」として使われてしまう可能性がある。

では、この「AI for School」ではどうだろうか。AIは関連するニュースを提示するのみで、答えを教えるわけではない。子どもは、自分でニュースを選んでいく。「知りたい、考えたい」と興味を広げていった先に、学習の「答え」を自分なりに探るようになるだろう。この時、AIは「勉強を面白くする」存在となる。学校の先生と一緒に仕事をすることの多かった田中さんは、「単に物事を教える先生よりも、むしろ『教えない先生』の方がいい先生なのではないか」と語る。だからAIも、「教えない」方がいいということなのだ。

開発に携わっている田中さん

「AI for School」が今後全国の学校で使われるようになったとき、私たちが持つAIへのイメージを「答えを教えるAI」から「勉強を面白くするAI」に変える存在になるのかもしれない。お二人の話を聞きながら、そのような期待を抱いた。

一方で「勉強を面白くするAI」を使いながら学習する子どもを前にしたとき、教師の役割とは何であるのだろうか。パソコンの不具合を直してあげたり、子どもたちの様子を見守ってあげたりすることが考えられるが、果たしてそれだけなのだろうか。

教師には、教師にしかできないことが、きっとある。だからこそ「授業の中で」AIをどう使うのかを問い続けることが大切になる。

「楽しい授業」であってほしい

最後に、未来の学校の授業はどうなってほしいかについて伺った。

「教師が教えるべきこと、教えなければならない内容はもちろんあると思います。でも、まずは『楽しい授業』であってほしい」。清水さんがそう力を込めて語るのは、学生時代に「知る楽しさ」がある授業では自然と覚えられたのに、楽しさのない授業ではうまく覚えられず、学ぶ意欲も湧かなくなったからだという。

ゼロから企画を考え、「誰もやっていないような面白いこと」を追求する理念のもと、TBSで仕事に取り組んできた清水さん。学校の授業でも、子どもたち一人ひとりが持つ「好き」や「楽しい」を出発点に、探究を深めていけるような学びであってほしいと、笑みを浮かべながら語ってくれた。

同じく開発に携わっている清水さん

お二人と話をしていると、何か「ワクワクする気持ち」が伝わってくる。この「AI for School」にはその「ワクワク」が詰め込まれているのだろう。

あらためて考えたい。私たちは「AIを学校の授業で使うこと」と、どう向き合えばよいのだろうか。利点もあれば、課題もある。だからこそ大切になるのは、「AIを使って何がしたいのか」という視点ではないだろうか。

清水徹郎さん

2000年TBS入社。ディレクターとして「アッコにおまかせ!」「THE TIME,」などの情報番組やバラエティを制作。「キンスマ」では農業をテーマにした長期企画や、ツリーハウス、ログハウス建築企画を担当。25年間番組制作に携わった後、2025年7月、TBSにエデュテインメント事業センターが設立され知育教育事業へ。

田中瑞人さん

1987年NHK入局。教育番組制作に携わり、「わがままオーケストラ」で国際エミー賞ノミネート、「マテマティカ」で日本賞総務大臣賞受賞。NHK for School統括、日本賞事務局長、メディアイノベーションセンター長を歴任。米TEDとの共同制作やMITメディアラボとの共同研究など国際的な仕事多数。2024年からフリーランス。ICU非常勤講師、TBS教育事業アドバイザー。

編集後記

「AIを学校の授業で使うこと」について、そこには「AIを使って授業をする教師」「AIを使って学習をする子ども」「そのAIを開発する企業」の三者がいる。しかし、それぞれの声を相互に伝え、聞き合うのは難しいだろう。ならば、いち学生として、私がその橋渡しをできればと思い、本記事の執筆に至った。少しでもこの記事が、多くの人のもとに届くことを願っている。

 

取材協力/ TBSホールディングス