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国境を超えて多くの人やものが行き交う現代。外国から移住してきた子どもや、外国人を親に持つ子どもの数も年々増えています。横浜市立南吉田小学校は、児童の半数以上が外国にルーツを持っています。取材する中で、国や言葉を超えて自然に他者と関わる子ども、そして彼らを大らかに支える教員の姿が見えてきました。多文化が共生する学校の歩みと、教員の思いに迫ります。

国際教室1年生の授業風景
3月13日、「国際教室」での国語の授業。外国にルーツを持つ子ども6人は、1年間を振り返っている。ある子どもは友だちと遊んだドッジボールの思い出を発表していた。時折言葉に詰まるが、先生も他の子どもたちもじっと言葉が出てくるのを待っている。話し終えると大きな拍手が送られた。
板書やポスターをよく見ると、漢字には振り仮名が振られている。先生もゆっくりと単語を区切って語りかけている。
南吉田小学校には、つい一週間前に来日して日本語に全くなじみがない子どももいれば、日本語を話せるけれど書くのは苦手な子どももいる。また両親は外国出身だが本人は日本生まれで幼少期から日本語を話してきた子どももいる。そういった多様な背景を持つ子どもたちに寄り添って支えるために、「国際教室」を設けている。

図(取材をもとに筆者が作成)
「国際教室」には「学年国際クラス」と「初期指導クラス」がある。外国にルーツのある子どもは、日本人も多くいる「一般学級」に在籍し、算数や体育、学級活動などほとんどの時間はこの一般学級で過ごす。その中で日本語指導が必要な子どもは国語の時間に教室を移動し、少人数の学年国際クラスで学ぶ。『スーホと白い馬』など一般学級と同じ単元を扱うが、教材や学習活動に工夫をしている。また、日本に来たばかりで日本語が分からない子どもは初期指導クラスで「うわばきを【はく】」「うわばきを【ぬぐ】」といった身の回りの単語から日本語を習得していく。

初期指導クラスの授業風景
国際教室の教員をしている伊藤由美子先生は、「国際教室が安心できる場所であってほしい」と語る。一般学級では自信がなくても、同じ状況を持つ子どもが集まるこの場では安心して発表できたり、他の子を助けてあげたりすることもある。少人数で自信をつけ、一般学級で輝ける手助けをするのが国際教室の役目だという。

国際教室を担当する伊藤先生の授業風景
母国(幼少期を過ごした国)ではできた勉強が、日本に来たら言語の違いでできなくなる。そういった状況にある子どもができることを一つでも増やしたい——。
そう語る伊藤先生は、南吉田小学校に転任してきた当時は衝撃を受けたという。一般学級で1年の担任になったが、「教科書を出しましょう」と言っても7、8人くらいに通じなかった。自分の中の「あたりまえ」が通じない。短い言葉を使ったり、ジェスチャーを付けたり、写真をたくさん用意したりと試行錯誤を繰り返していくうちに、だんだんとコミュニケーションが取れるようになってきたという。3年前に国際教室の担当になったきっかけは、「外国にルーツを持つ子どもの姿は一般学級と国際教室でどう変わるのだろう」と思ったことだった。
現在、子どもが安心する国際教室づくりに励む伊藤先生。休み時間にはルーツに関係なく子どもたちが集まってくるそうだ。「南吉田小の子どもたちにとっていろいろな国の友だちがいるのは『あたりまえ』。大人の方が身構えてしまうけれど、子どもは気にせず溶け込んでいくものだから頼もしいものです」。
近年のグローバル化に伴って、外国にルーツのある子どもは年々増えている。その中でもなぜ、横浜の公立小学校に、外国にルーツのある子どもが多いのだろう。
その理由は、江戸時代までさかのぼる。江戸時代後期、浦賀に来航した黒船を契機に、横浜は江戸幕府と外国人とを結ぶ窓口となった。外国人居留地が設けられ、中国人が住んだ居留地は横浜中華街にもつながる。その後、働き手としても多くの外国人が移り住み、2026年3月時点で横浜市には14万人を超える外国人が住んでいる。
南吉田小学校では、2010年時点で児童全体のうち外国にルーツのある子どもは3割ほどだったが、その後4年で5割近くまで増加した。急速な変化に、保護者や地域の人が不安感を抱くこともあったという。金子正人校長は南吉田小学校の歩みをこうふり返る。
「違う言語を話す、違う文化を持つ人に恐れや不安を抱くのは、人間として自然なこと。『外国人』に限った話でもありませんが、南吉田小ではこうした不安に対応するため多文化共生の取り組みを続け、外国人とともに生きることは自然なことで、不安に思う必要はないということを示してきました」。

南吉田小学校を語る金子校長
南吉田小学校では、6か国語のアナウンスで始まる運動会、民族衣装を着た聖火リレー、国際読書会など、多文化を知る機会を積極的に作ってきた。校長自身はそれらを「ライフワーク」だと話す。
「なにも変わった取り組みをしようとしているわけではないです。いろいろな国の子どもがいることを生かそうとした結果であって、子どもたちにとってはこれらの行事も日常ですから」。
金子校長は続ける。「子どもは言葉が通じなくても遊びや生活の中で自然に他者を受け入れていきます。そんな子どもの適応力や共生力に、むしろはっとさせられるのは大人の方です」。子どもから学びを得る姿は、伊藤先生と重なった。
昨年度で120周年を迎えた南吉田小学校。金子校長に、子どもがどのように育ってほしいかを聞くと、廊下でもよく見かけるこのスローガンが返ってきた。南吉田小の子どもたちのほとんどがそらで言えるという。

「笑顔で結びつなげよう南吉田」
『つなげよう』というのは外国にルーツのある子どもだけではない。「いろいろな性格や特性、障がいのある子どもも含めて、自分と違う他者を受け入れて生きてほしい。他者とともに生きていける子どもになってほしい」。金子校長はそう語った。
南吉田小学校の子どもたちに学校で何をしている時が楽しいかを尋ねてみると、「遊んでいるとき!」という答えが返ってきた。外国につながる子どもがいるという「あたりまえ」と、国のルーツに関係なく楽しい学校生活を送ることができているという「あたりまえ」。後者のあたりまえは、子どもが互いに他者を思いやる姿勢と教員の環境づくりに支えられているように思う。 その尊さを実感するとともに、教員を目指す私も他者と結びつながれるクラスを作りたいと思った。
執筆・編集/小沢真奈、平川璃空
取材協力/ 横浜市立南吉田小学校

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