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2026.07.10
edumottoでも複数回にわたり取材をした、東京学芸大学こどもの学び困難支援センター(以下、sure)のさくら教室。学芸大学と沖縄をつなぐこの取り組みが、第10回 農林水産省 食育活動表彰の食育推進ボランティアの部最高賞である「農林水産大臣賞」を受賞しました。(農水省HPより「第10回 食育活動表彰 結果」)
今回、157件の事例の中から、特に優れた取り組みを行っている5件の団体として選ばれたさくら教室。食を媒介として子どもの育ちを支えるその活動と、そこに込められた想いを伝えます。
執筆/岩田有紗、永井 歩
「食育は評価につながりにくい。だから大賞を取りに行った」。そう語るのは、さくら教室を運営する神谷康弘さんだ。食育の成果は短期間で現れるものではなく、数値化することも難しい。その中で神谷さんが評価にこだわる理由は、活動の永続性だ。
「貧困状態にある子どもを減らすために活動を始めた。でも続けるうちに気がついた。減らない、減りようがない。すぐに解決できる問題ではないからこそ、できる限り長く続けられる取り組みにしていきたい」
神谷さんにとって、今回の受賞は単なる栄誉ではない。「賞をいただくことで、目に見える形で、この活動を地域の方々や子どもたちに伝えていくことができると感じた。次の世代へのバトンタッチも含めて、子ども、学生、地域、そして場そのものが成長していけるような具体的なアクションを積み重ねていきたい」と語る。

今回の授賞式にて。左から、神谷さん、千野先生、活動に参加する学芸大学の学生、sureの田嶌大樹先生
今回「受賞」という形で評価されたさくら教室の取り組みとはどのようなものだろうか。その活動の変遷とさくら教室の活動を特徴づける、オンラインを活用した「共食」を紹介する。
「初めは食べさせることが目的だった」。神谷さんは当時を振り返ってそう語る。さくら教室の前身は名護こども食堂。資金難を抱える中で運営を引き継いだ神谷さんは、企業や大学と連携する道を模索し、学芸大学と出会った。
大学との協働が始まってから、学生を中心にさまざまな取り組みが始まった。大人が栄養価の高い食事を提供するだけではなく、子どもにも自分で生活をしていくための知識を身に付けてもらいたい。養護教育を専攻する学生が中心となって歯磨き指導を行ったり、食品メーカーと協力して料理教室を開いたりした。

子どもたちと大学生が一緒に作成した食育紙芝居、『ソレ!イケ!ヘルスマン』。ヘルスマンと一緒なら苦手な野菜も食べられる?
活動の中で大学生が果たす役割は大きい、と神谷さんは語る。嫌いな歯磨きも「信頼している大学生と一緒だとできる」。子どもの成長を願う大人たちの確かな想いと、大学生の若い力が合わさって、さくら教室は子どもたちが生きる力を育む場へと変わっていった。
さくら教室では「共食」を大切にしている、とsureの千野たみ先生は語る。水曜日の放課後、学芸大学の一角にあるsureの部屋では、モニターの手前で学生たちが卓上コンロを囲む。画面の向こうにいるのはさくら教室の子どもたちだ。

左側のモニターの奥にさくら教室の子どもたちがいる。画像に写るのは、調理をしながらこどもたちと関わる学芸大生たち。
大学生と子どもたちが囲むのは今日の夕ご飯。互いに同じメニューを調理し、食べている。この日のメニューは沖縄の郷土料理である「ヒラヤーチー」だ。東京から活動に参加するA類国語コース3年の足利陸斗さんは「沖縄と東京で食材には違いがあっておもしろい」と語る。
初めはカメラに慣れず、画面を避ける子どもが多かったという。しかし、学芸大学とさくら教室、沖縄のリゾートホテルが連携してインターンシップを立ち上げ、学生が毎年夏にさくら教室に訪れるようになると、徐々に風向きが変わっていった。子どもたちと学生が対面で関係性を築けるようになると、オンラインでの交流も活発になっていったという。現在、画面に近づいては離れていく子どもたちの姿は、物理的な距離を感じさせない。
「食べないと生きていけませんし、食は命をつなぐもの。ただ、そこにとどまらず、食を媒介として沖縄と東京がつながり、子どもたちや学生たちが変化していく。その姿を示すことで、こども食堂の新たな可能性を伝えられたと思う」。千野先生は、今回の受賞をこう振り返る。
学生メンバーの足利さんは「大きな表彰をいただくことができた。これをきっかけとして活動が広く知られ、教育大学の学生が、学校教育にとどまらない子どもとの関わり方を模索していることを知ってもらえたら」と今後に期待を寄せた。
食べることは、生きること。食は人と人をつなぎ、未来を育てる力を持っている。今回の農林水産大臣賞受賞を新たな出発点として、さくら教室はこれからもその歩みを続けていく。
こども食堂という現場に携わる人の覚悟と、大学生の活動を見守る大人の暖かさを感じた取材でした。名護市場で働く人たちの思いから生まれ、食を媒介として学びの場を拡げてきたさくら教室は、子ども・学生・地域・場の成長を子ども食堂という立場で成し遂げてきたひとつのロールモデルです。究極的には子どもの貧困がなくなることを目指して、その日までこの活動が末永く続くことを願っています。(岩田有紗)
子どもたちとの信頼関係を築く上でも、「子どもたちの学び」という点でも、大学生がさくら教室の活動に与える影響は大きいと感じました。また支援する・される関係性を超え、ともに食べて学ぶことは、子どもたちの将来的な自立を促していると思います。今回の受賞を機に、「食」を通じて人と人がつながれるというメッセージが、多くの方に伝わってほしいと思います。(永井歩)
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取材協力・画像提供/ 東京学芸大学こどもの学び困難支援センター

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