
What Do You Think?
思いを伝えるオープンキャンパス2025 ~大学生×高校生で語り合いました~
2025.09.16
東京学芸大学公式ウェブマガジンWhat Do You Think?
2026.03.10
東京学芸大学のキャンパス内にある「もくせい教室」を知っていますか。
この教室は、小金井市教育委員会が運営する、不登校の子どもたちの学びを支える場で、人材や環境を生かした体験活動を行っています。本記事では、もくせい教室の体験活動に注目して取材しました。
もくせい教室は教員養成大学のキャンパス内にあるという点が特徴的で、市から派遣された指導員の先生と学芸大学の学生たちが協力しながら、学校へ行くことに難しさを感じる子どもたち一人ひとりに寄り添っています。教室では普段、子どもたちが自分のペースで「その子らしさ」を生かした活動に取り組みます。友だちと遊んだり、本を読んだり、絵を描いたり、パソコンでプログラミングや調べものをしたり……。先生や学生は、そんな子どもたちの興味や挑戦に伴走し、ともに考え、学んでいます。
一方で、不登校の子どもたちは学校で経験できるような、さまざまな体験活動の機会を得ることが難しいという現状があります。そこで、大学の広い敷地やさまざまな施設、教育を学ぶ学生、地域とのつながりなどを生かした体験活動を実施しているのです。学生が企画する体験活動もその一つで、有志の学生が自分の特技や専攻を生かして企画を持ち寄ることもあります。たとえば、柔道部の学生による柔道場で体を動かすプログラムや、大学院生主催のボッチャの体験やアートのワークショップなど、多彩な活動が実践されています。

学芸大学の大学院生の企画で行われたアイスブロックメルティングの様子。子どもたちは、色のついた氷を溶かしながら紙の上に色を広げ、絵を描いて楽しんだ。

学芸大学を拠点としながら、市政、地域団体、一般社団法人など、多様な人々と協力している。

学芸大学内の教材植物園の一角にあるもくせい教室の田んぼに実った稲穂
2025年9月、学芸大学の敷地内にある「教材植物園」で毎年恒例の稲刈りが行われました。この活動は、小金井市環境市民会議の方ともくせい教室の元指導員のつながりから始まったもの。もくせい教室、環境市民会議、こどもの学び困難支援センターといった、地域と大学の協力によって、春の田植えから秋の収穫、脱穀、稲わらを使ったしめ飾りづくりまで、稲作を通した体験活動が実現しているのです。
このような連携によって行われる稲刈りは、年齢の差に関わらず子どもと大人が対等に学び合い、子どもたちがいきいきと活躍できる場となっています。普段のもくせい教室では静かな子も、だらだらと汗を流しながら一生懸命に鎌を動かし、真剣な表情で稲を刈っていました。大学が地域と手を取り合い、教室の外に学びの場を広げたからこそ、子どもたちの日常の場では見られない一面が引き出され、その子の可能性が広がっているのです。

環境市民会議の方に教わりながら稲を刈る子どもたちの様子
もくせい教室指導員の今城 徹先生は、日々活動の場に立ち会う中で見えてくる子どもたちの変化について、次のように話していました。
「『自分は稲をザクザクと刈ることが得意かもしれない』、『田んぼのドロっとした感触が楽しい』。そんな小さな発見をし、新たな自分に出会った子どもたちには、次に頑張るための自信が芽生えるのです」

もくせい教室指導員の今城先生
しかし、このような意義のある体験活動について、指導員の先生方は試行錯誤の連続だと語ります。「子どもたちにはさまざまな体験をして欲しい。一方で、その一歩を踏み出せない子どももいますし、中には友達に合わせて参加をやめてしまう子もいます」
もくせい教室では子どもたちの興味や意欲を尊重しながら、そうした迷いや立ち止まりの時間も含めて見守る関わりが続けられています。子どもたちの成長のために体験活動を勧めることと、無理をさせずに寄り添うこと。その両立の狭間で、指導員の先生方の葛藤は日々続いています。
指導員の先生が感じているこのような葛藤に、どのように向き合えば良いのでしょうか。もくせい教室と学芸大学との連携や学生ボランティアの活動をサポートする、こどもの学び困難支援センターの河 美善(は みそん)先生はこう語っています。
「体験活動に積極的に参加できない子どもたちも、その子の在り方として尊重してあげたい。参加しなくてもその場にいっしょにいたり、気になってちょっと見にきたりというのも一つの経験として学びになると思うのです」

こどもの学び困難支援センターの河先生
皆が同じように参加しなくても、他の子どもがそれぞれの興味関心をもって楽しんでいる姿を見ることが、「何かやってみようかな」と思うきっかけになるかもしれません。だからこそ、多様な体験活動を準備しておくことには大きな意味があります。
もくせい教室が学芸大学を拠点に、教員や学生、外部の団体と連携することで指導員の先生の継続的な見守りに支えられた「安心できる場」でありながら、子どもたちが新しい人や体験に出会える「広がりのある場」として機能しているのではないでしょうか。子どもたちの学びを支える形はさまざまであり、もくせい教室のように多職種が力を合わせる取り組みも、その一つです。こうした実践が積み重なり、社会全体で子どもの学びを考え、支える輪がさらに広がっていくことを願います。
取材を通して、子どもたちの成長を願う大人たちの想いと行動が重なり合い、確かな力となって一人ひとりを支えていることに深い感動を覚えました。私も学生として子どもの学び支援の一端を担えるよう、できることから一つずつ取り組んでいきたいです。(河野)
学校に行って学ぶことがすべてではない。もくせい教室の取材を通して、子どもたちのそれぞれの在り方を尊重しながら、豊かな学びを提供するためにさまざまなセクターと「つながり合う」大切さを学びました。(山田)
〈関連記事〉
取材・編集/河野百華、山田奈々葉

What Do You Think?
思いを伝えるオープンキャンパス2025 ~大学生×高校生で語り合いました~
2025.09.16

What Do You Think?
食で育む笑顔と健康~農園から広がる「食育」の輪~
2025.07.04

What Do You Think?
新たな自分との出会いを~オープンキャンパスで考える「私たち」の進路~
2024.08.20

What Do You Think?
2024年度は7/27開催 オープンキャンパスにおけるedumottoの活動を紹介!
2024.07.16

What Do You Think?
災害廃棄物の問題を考える〜能登半島 被災地支援活動に参加して〜
2024.04.26

What Do You Think?
edumotto学生メンバーがワークショップを企画しました!【東京学芸大学オープンキャンパス2023】
2023.10.23