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未来の学校 みんなで創ろう。PROJECT

「完成しないみんなで創り続ける学校を目指して」100人輪読会

未来の学校 みんなで創ろう。Projectからの「20の提言 (1st Season 2020~2022)」

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「みんなで未来の学校を創り続けたい」

参加する人の一人一人の思いを起点に、教員だけなく、行政、企業の人も一緒にみんなで一つ一つ現場の問題や課題を解決していきたい。
一つ一つのプロジェクトを積み上げていくことで、学びや教育だけでなく、「学校」という仕組みを変革していきたい。
それが「未来の学校みんなで創ろう。Project 」です。
合言葉は「好きに、挑む。」
学校の先生も、企業の人も、行政の人も、みんなが好きに挑むことで、未来の学校を創り続けていく、その中から生まれてきのが本提言です。
本提言は完成品ではなく、読んでくださった一人一人に新たな「問い」や「好き」が生まれ、新たな取り組みが生まれ、提言が常に更新されていくことを目指しています。

本提言が目指すもの

  1. 教育内容だけでなく、社会のシステムの一つである学校そのものを変革し、創り出す起点となる。
  2. 理想像の設定や標準化をできる限り避け、各時代、各現場おいて見いだされた問題、設定された課題を、各現場のメンバーが解決していく起点となる。

本提言が目指すもの

「学校」とは公教育を実施し、個人と社会の Well-being を実現していくための社会的なシステムの一つです。教育をアプリだとすれば、学校というシステムはそれを動かしていくための OS だと例えることができます。教育をどんなに新しいものに変えていっても、それを動かす OS である学校というシステムが古いままであれば、新しい教育はうまく働きません。

学校というシステムは教育内容・方法と人(学習の主体者である児童生徒や教育を実施する教員等)と環境(学校施設や設備等)で構成されています。そのため、どんなに新しい教育を開発しても、人と環境がその教育を実施できるようになっていなければ、学校教育に広く普及し、実施されることはありません。

本提言は、教育内容についてではなく、教育を実施していくための学校という仕組み、特に、人と環境を変革していくための提言が中心となっています。

また、学校は、社会のシステムの一つであるため、時代や場所に沿って、常に変化させ、創造し続ける必要があります。学校には、一つの理想像があるわけでもなく、学校創造にゴールがあるわけでもありません。

システムが稼働し始めた瞬間から人はシステムに縛られることになります。提供されたシステムであればなおさらです。本提言は成果として展開可能で標準化されたソリューションを提示するのではなく、プロジェクトの成果を一つのモデルとして提示することで、それを起点として、各現場での自らによるシステムの創造と変革が繰り返されることを目指しています。

※本提言はPROJECT全体の総意ということではなく、「未来の学校みんなで創ろう。 PROJECT」を進めていく中で、事務局の各メンバーが考えたことを提言としてまとめています。

提言の起点となった12の問い

提言の起点となった12 の問い

全体

  1. 学校の持つ問題や課題は全国津々浦々、個別のもので、標準化された、外部からのソリューションはあまり役に立たないんじゃないか。
  2. ただ一つの理想の学校、この学校が学校というもののゴールですなんて学校、ありえますか?学校は変え続けていかないといけないんじゃないか、しかも、町全体で変え続けていけたら、それはそれで、個人と社会の Well-being の実現の一つの形なんじゃないか。

誰一人取り残さない

  1. 何で勉強しなきゃいけないの?この永遠の問いに答えはないと思うけど、みんながこの問いに対して納得解を持てれば、積極的に学べるようになるんじゃないか。

主体的な学び/学校を開く

  1. プログラミング教育、道徳、STEAM教育、キャリア教育、対話的で深い学び、個別適応、次から次へと○○教育、そんなの先生だけで全部できるのだろうか。教員の人数だけではなく,教員を支える人数を異次元のレベルで増やす必要があるんじゃないか。
  2. なんで学校には子どもしか行けないんだろう?大人も子どもと一緒に部活動してもいいんじゃないか。

学校DX

  1. 最先端技術を教室に導入しても、教員はスーパーエンジニアじゃないし、使いきれないんじゃないか。そもそも、そんな予算ないだろうし。
  2. テクノロジーはどんどん進化していくから、とにかく、すぐに取り換えられるような教室にしておいたほうがいいんじゃないか。
  3. 学校にいなくても、学校の授業が学校と同じように受けられたらいいんじゃないか。
  4. 学校現場に必要なのは、全国的なビッグデータの分析による傾向の把握じゃなくて、目の前の子ども達一人一人の見取りに使える、子ども達一人一人の時系列、教科横断のビッグデータの分析なんじゃないか。
  5. テストの点だけじゃなくて、これからは記述だってデータとして扱って恣意的でない見取りをしていけるといいんじゃないか。
  6. 子ども達の学びから生まれてくる成果は、一つの人類の「知」であり、その「知」はちゃんとアーカイブしていかないといけないんじゃないか。
  7. 「教育の本質を見失う」、テクノロジーファーストのテクノロジー導入は否定されることが多いけど、思いっきりテクノロジーファーストで試してみたら、何か面白い、もしくは、価値のある教育がうまれてくるんじゃないか。

「未来の学校 みんなで創ろう。Project」からの20の提言

「12の問い」に対応して、実践検証したこと、実践検証を通じて気がついたことをまとめたのが「20の提言」です。

20の提言

誰一人取り残さない

【提言1】

子ども達が「私はなんで学ぶのか」を対話を通してしっかりと考え、納得解に辿り着く機会をつくったらどうだろうか。

【提言2】

学びが自己目的化する、とにかく面白くて夢中になるという視点から教育を捉え直してみてはどうだろうか。

【提言3】

「何がわからないか」ではなく、「どうしてわからないか」を、学習者の学び方、学びへのアプローチに注目して、観察と対話で解きほぐしていってはどうだろうか。

【提言4】

これからの未来の学校教育においては、「必要だから学ぶ」から「楽しいから学ぶ」へ学ぶモチベーションの転換を図り、学びを「自分事化」できるゲーミフィケーションの考えを生かした学びの場を増やしていくべきではないだろうか。

【提言5】

教育は、子ども達の未来のために理想を描いて、そこに近づけるという営みになりがちであるが、もう少し、子ども達の「今」に注目してもいいのではないだろうか。学校をもう一度、子ども達の「今=居心地」という視点で考え直してみてはどうだろうか。

主体的な学び/学校を開く

【提言6】

「STEAM 教育ファシリテーター認証制度」を開発、実装させ、社会人の研修の一環として STEAM 教育のファシリテートする仕組みをつくり、異次元の人数のファシリテーターの学校教育への参加を促進してはどうだろうか。

【提言7】

地域の人や他学年の保護者など、教員でも保護者でもない多様なサードパーソンの視点で授業を見取ることで、生徒1人1人に対して捉えられるシーンの数を飛躍的に増加させ、より「個」に注目できる体制づくりはどうだろうか。

【提言8】

VUCA 時代。従来からの「職業調べ」ではなく、変化を前提としたキャリア教育を考えたい。働く人たちの多彩な言葉や考えに触れる「価値観調べ」に重点をおき、その中で自分自身の価値観を見つめていくアプローチはどうだろうか。

【提言9】

私たちはコミュニケーションを取ることによって世界を創造しているのだから、社会に開かれた教育課程の実現として、学校内の空間を社会に開いていくことで新しい価値をつくることもできるのではないだろうか。

【提言10】

子どもだけでなく、大人も含めた地域全体が学びの場として学校を共有し、学校のハイカラ化を進め、地域ならではの主体的な学びを実現していく SHARE SCHOOL 構想を進めていってはどうだろうか。

学校DX

【提言11】

GIGA スクール時代の教室の DX と言っても、最先端のテクノロジーをいれるのではなく、コモディティ化した使いやすい、あまり導入費用がかからない、本当に必要なテクノロジーを導入してはどうだろうか。

【提言12】

全教室でなく、少なくとも各学校 1 教室だけでも ICT に特化した教室をつくっていったらどうだろうか。

【提言13】

私たちはその一つのモデルとして、①多様な掲示が可能で、板書も可能な大きな掲示装置、②移動が簡単な机と椅子、③外部からも実際にいるのと遜色なく参加できる授業の配信ができる、④新しいテクノロジーを設置しやすいという特徴を持った SUGOI 部屋を開発しました。

【提言14】

全国レベルの学習データの分析だけでなく、各教室における児童生徒一人一人の時系列、教科横断の学習データを分析して、児童生徒の学びの状況の見取りや予測をしていってはどうだろうか。

【提言15】

教員の評価のばらつきを是正するために、各クラスの学習データ全般を統計的に分析し、特に外れ値に注目してはどうだろうか。

【提言16】

児童生徒一人一人の個人としての非認知能力や見方・考え方等を見取るために、全教科の記述を生成系AI に分析させて、傾向を読み取っていったらどうだろうか。 このシステムを活用して、恣意的になりがちで、難易度が高い、教員による記述の評価を支援し、ばらつきをなくしてはどうだろうか。

【提言17】

学校図書館を、本の貸し出し・読書をする場所というだけでなく、児童生徒が「知」(情報・知識)を獲得し、「知」を創り出す、そして、その創り出した「知」(学びの成果物)をアーカイブし、新たな「知」とし提供するという「知の循環」の拠点としていってはどうだろうか。

【提言18】

テクノロジーの使い方に注意は必要だが、既存の価値観とテクノロジーの善悪を結びつけるのではなく、テクノロジーがもたらす思わぬ価値や可能性に目を向け、思い切りテクノロジーファーストで活用してみてはどうだろうか。

全体

【提言19】

教育方法の標準化と個別最適化って、普通に考えて矛盾してないだろうか。教育内容は標準化しつつ、教育方法はできる限り標準化せず、他地域の好事例に刺激を受けながら、現場の課題を各地域で、みんなで考えて、解決していく、文部科学省や大学が相談機能、コーディネート機能を担っていくというように仕組みを変えていったらどうだろうか。

【提言20】

毎年、新しい先生と新しい児童生徒が入ってくるのだから、子ども達も含め、地域のみんな一人一人が「どんな学校だったらいいかなあ」と考え続け、対話し続け、それをちょっとずつでも実現していく、そのような「みんなで学校を創り続けている」ということ、「完成しない学校」が理想なのではないだろうか。

20の提言詳細

未来の学校 みんなで創ろう。Projectからの 「20の提言1st Season 2020~2022 ~完成しない、みんなで創り続ける学校を目指して」の詳細は、下記PDFでご覧いただけます。

20の提言(1st Season 提言2020~2022)(PDF形式)