未来の学校 Topics
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未来の学校 Topics
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このプロジェクトはVRやARという空間や体感に関連する新しいテクノロジーをどのように教育活用していくかを研究開発するプロジェクトです。
仮想空間における体感的な体験が授業等の学校での活動にどのように位置づくのかを実践的に研究開発をしながら、VR/AR教材を開発していこうと考えています。
また、仮想空間という空間が教育、学び、学校にとってどのような可能性を持っているのかを広く並行して研究していきます。
コロナ禍の影響が続く中、GIGAスクール構想(全国の児童・生徒1人に1台のコンピュータと高速ネットワークの整備計画)が前倒しで実現されつつあり、全国の教育現場におけるICT機器活用の実践もより急速に進みつつあります。教員自身のICT機器活用能力だけではなく、児童・生徒1人ひとりの機器活用能力の向上にむけた教員の指導力の資質向上が求められています。
そうした中、PCやタブレットに加えてVR(仮想現実)技術もまたいろいろな教育活動に活用する取り組みが増えてきており、すでに博物館や美術館、図書館などでは館内施設の閲覧など様々なサービスを提供し始めています。
VRはVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)を使用し、仮想空間に現実のものや創造したものを再現・再構築した環境の中で活動をすることができます。実体として物理的に存在しているわけではありませんが、VRHMDを通し視覚情報として眼前に実在するものとして認識されています。
VRHMDを通して見る映像は、自由に頭を動かすことで360°見たい方向をみることができます。テレビのように誰がどこで見ても同じ映像しか見ることができないものとは異なります。ただし、VRHMDで360°の映像を見るためには、360°カメラ等で撮影された映像である必要があります。一定の方向だけが撮影された映像ではVRHMDで見てもTVと同じ映像になります。
実は、VRHMDでなくとも360°カメラ等で撮影された映像やコンテンツは、PCやタブレットでも視聴は不可能ではありません。では、なぜVRHMDを活用するのか。PCやタブレットとVRHMDの違いは何か。
PCやタブレットは画面という限られた範囲しか空間をのぞき見ることができません。しかし、VRHMDを活用すると視覚範囲全てに空間が広がるため、その場にいるという臨場感、そして空間内の活動に集中できる没入感がPCやタブレットとは全く異なります。例えるならば、PCやタブレットの画面は部屋の窓から外の世界を見ているイメージです。一方VRHMDはその部屋の壁や天井などがなくなった状態と考えてもらえばいいと思います。壁や天井のない部屋から見る外の世界は、360°見渡せることで見たいところを見ることができるのです。受動的に「見せられている」感覚から、主体的に「見ている」感覚へ。そこに学びの主体性が生まれ、何かしらの学習効果が期待できるのではないか、そうした可能性を十分に期待できます。
VRHMDを活用することの意味はそれだけではありません。VRHDMの自由度には3DoF(3 Degree of Freedom(3次元自由度))と6DoF(6 Degree of Freedom(6次元自由度))の2つのタイプがあります。
360°カメラ映像はカメラを視点とした映像であり、360°カメラで撮影した、つまりカメラ目線で見ているものしか映像の再現をすることができません。VRHMDを使っている人は、その場(カメラ位置)から上下左右前後の映像はどの方向でも見ることはできますが、その同一の映像を別の位置へ移動してみることはできません。カメラの映像を切り替えれば、また別の場所に移動して見ることができますが、それはカメラの位置が変わったために映像が切り替わったのであって、VRHMDを使っている人が自由に好きな位置へ移動したわけではないのです。周囲(映像)が動いたことで、あたかも自分が移動したかのように感じているだけですから、言わば、VR:天動説的と考えることができます。周囲が移動し変わらない限り、VRHMDを使っているひとは同じ場所から360°を見渡すことしかできません。これが3DoFです。
VRHMDを活用すれば、仮想的に創り出された空間の中で活動することも可能になります。立体的な仮想空間の中で自分の意志で好きな場所に移動することができ、かつ360°の視界もありますので、仮想空間においてまさしく現実の世界と同じことができるようになるのです。これが6DoFであり、こちらはVR地動説的と考えることができます。
先に述べた例でいうと、PCやタブレットが部屋の窓で、3DoF・VRが壁・天井のない部屋であるとすれば、6DoF・VRは部屋から外の世界へ飛び出して自由に活動している状況であるといえます。
このようにして、例えば教室を仮想空間に再現し、その中で授業を行うことができるようになれば、VRHMDを用いて遠隔で授業に参加することができます。さらに、現実世界と仮想空間を組み合わせるAR(拡張現実)技術を活用すればさらなる可能性もでてくるでしょう。そうすれば、何かしらの理由で教室に来ることができない場合でも授業を受ける機会を提供することが可能になります。
以上、VR活用の可能性について述べてきましたが、次回はVRをどのような学びにどのように活用しうるのかについて、具体例を挙げながら考えてみたいと思います。
プロフィール
木村守(きむらまもる)
東京学芸大学ICTセンター長、東京学芸大学外国語外国文化研究講座教授。1967年生まれ。東京学芸大学卒、広島大学大学院博士課程修了。専門分野は中国語教育、中国古典文学、漢字情報処理、教育支援協働学。日中人文社会科学学会副会長、日本教育支援協働学会理事を兼任。漢文教育、中国語教育、漢字情報処理分野において各種ICT機器活用のためのコンテンツ開発・実践研究を行っている。
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