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「本のプロフェッショナル」に 〜学術リソース管理係の業務に迫る【司書体験完結】

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東京学芸大学附属図書館の蔵書数は920,347冊(2025年度末時点)。この数字には、館内の書架にある本だけではなく、書庫や、研究室で管理されている本も含まれています。では、これほどにも膨大な量の本たちを、附属図書館はどう管理しているのでしょうか?

取材・編集/山本理功・居倉優菜

大学図書館の特徴を復習!

公共図書館(まちの図書館)と大学図書館のちがい
公共図書館:主な利用者/地域住民が中心。使命:地域情報の拠点、住民の課題解決の拠点。蔵書/小説やビジネス書、調べものに役立つ図書、地域資料など多様。東京学芸大学附属図書館:主な利用者/大学生・教職員、研究者などが中心(学外の方も利用できます)。使命:①学術情報基盤の整備②学生の学修を支援する拠点のひとつ③教育現場、地域及び国際社会に貢献(㏋より引用)。蔵書/学問に関わる図書や雑誌・論文が多い(引用 東京学芸大学附属図書館 「運営方針・理念」 閲覧日:2026年9月16日)

第1弾では学術リソース管理係(雑誌)とアーカイブ係のお仕事を、第2弾では利用者サービス係と文献サービス係のお仕事を、それぞれ体験してきた edumottoメンバー。同じ図書館であっても、公共図書館と大学図書館ではさまざまな違いがあり、そのお仕事も多岐にわたるのでしたね。
司書体験の最終回となる今回は、学術リソース管理係(図書)を紹介します。そのプロフェッショナルなお仕事を体験しながら、担当の沼嵜さんにお話を伺ってきました!

なにをどう管理しているの?

今回体験した学術リソース管理係(図書)では、附属図書館・研究室の雑誌以外の書籍を筆頭に、電子書籍・視聴覚資料などの購入や管理を担当しています。 第一弾で体験した学術リソース管理係(雑誌)とは、雑誌を扱うのか、本を扱うのか、というところに違いがあります。

学術リソース管理係(図書)のみなさんのテーブルには、必需品があるのだとか……。

沼嵜さん:バーコードリーダーは手放せません。さまざまな数字を入力することが多く、桁が多いと手で打ち込むのは大変なので、一人ひとつ、必ずデスクに持っています。

バーコードリーダーの写真

本が届くまで【購入】

学術リソース管理係(図書)の仕事は、【購入】【受入】【登録】【管理】の大きく4つにまとめられ、それぞれの中もいくつかのステップに分かれています。まずは、本が届くまで、【購入】の過程を見てみましょう。

買う本を選ぶ!

図書館の本はどのように選ばれているのでしょうか? 教員による推薦、学生からのリクエスト(※附属図書館ウェブサイト参照)などもありますが、実は「図書館推薦図書」として、職員さんが選んでいるものもあるのです。
そもそも、どんな本でも購入してよい、というわけではありません。本を選ぶ方針となる「蔵書構築指針」や「図書館推薦図書等選択基準」を元に、それが基準の方向性に沿ったものであるか、逐一確認しながら選書していきます。

図書館推薦図書等選択基準の一例 : 第3条 (10) 文学​
1.すでに高く評価されている著名な作家の全集(著作集)等は、できるだけ備える。個人の全集で編集上の特色があるものは,重複する作品があっても備える。​
2.著名な作家およびその作品に対する研究書(作家論・伝記・作品論)は、できるだけ備える。​
3.現代の作家の作品は、書評等によって高く評価されたものや定評のある文学賞を受賞したものを備える。​
4.児童文学の代表作は、できるだけ備える。​東京学芸大学附属図書館「規程・指針」より、ライターが一部引用(最終閲覧日:2026/9/16)

沼嵜さん:図書館職員が内容やジャンルに応じて4つのグループに分かれ、図書館推薦図書として購入する本を選定しています。各グループで購入する本が決定した後、学術リソース管理係(図書)で取りまとめ、書店に注文しています。最終的に、附属図書館に置く本としては、1か月ごとに約100から200冊を購入しています。

毎週書店や出版社から提供される新刊本の情報冊子。これらも参考にしながら選書する

丁寧に基準と照らし合わせながら選書していく

いざその本を注文!

購入する本が決まったら、書店に注文します。
誰が頼んだ本なのか、いつ頼んだのか、どの書店に頼んだのか、などを記録し、それらをすべて発注番号で管理します。

沼嵜さん:基本的には後払いなので、いくらの本なのか、というのもここで記録しておき、本が到着した後にこのデータと照合します。

本が届いたら【受入】【登録】【管理】

見た目を「図書館の本」に整える!

本が届いたら、注文していたものと相違がないかを確認した上で、「図書館の本」にする作業が始まります。この後に紹介する登録の作業と、一部は同時並行で行われます。

①本にバーコードシールを貼る

自動貸出機での処理ができるように、資料の地(底面)、背(閉じられているところ)からそれぞれ14センチ四方の範囲内にバーコードシールを貼っていきます。

万一カバーが外れても大丈夫なよう、中の本そのものにも貼っておきます。

バーコードシールを貼る様子

館内に設置されている自動貸出機

②背ラベルを貼る

館内のどこにあるかわかるよう、本の背にラベルを貼ります。タイトルや著者名とは被らないよう、場所にも注意します。

背ラベルを貼る様子

 

③蔵書印を押す
附属図書館の蔵書であることを示すため、天(本の上面)にハンコを押します。この作業が案外難しく……?

沼嵜さん:表紙が厚紙などでできているハードカバーであれば押すのは簡単ですが、新書のようなソフトカバーの本は難しいです。歪まないよう本の端を押さえながら押すのがコツです。

沼嵜さんが蔵書印を押す様子。端を押さえながらの熟練の技!

「図書館の本」としてシステムに登録!

見た目を整えるだけでなく、本のデータを図書館のシステムの中に組み込む作業も欠かせません。附属図書館内には50万冊を超える蔵書があるので、これらを整理するため、主題ごとに、ルールに則って本を並べています。

その時に役立つのが「目録」です。タイトルや著者の名前、出版社や出版年(これらの情報を、「書誌情報」と言います)など、さまざまな観点から本を探し出せるようにデータを登録しておくことで、膨大な量の蔵書を体系立てて管理することができます。

パソコン上にデータを登録していく作業。情報は正確に!

ここでは、利用者が図書館で本を探す際に目にするであろう「913.6」のような番号、「請求記号」を決める作業も行います。

本が日本十進分類法ではどこに分類されるのか、吟味していきます

沼嵜さん:他の図書館でどのように分類されているのかを調べて参考にすることも多いですが、悩む時、わからない時には先輩に相談します。分類については、時々部署の中でも議論になります。

新しく購入した本は、これらのさまざまな作業を経て、ついに貸し出しができる「図書館の本」になります。

もちろん、本を購入してばかりいては図書館から溢れてしまいます。ボロボロになってしまっていたり、内容が古くなってしまっていたりする本を廃棄する作業も、学術リソース管理係(図書)の役割である【管理】のひとつです。本を受け入れて、それを廃棄するまで、本の一生に携わるお仕事なのだと、体験を通じて感じることができました。

一見地味に見えてしまいがちな【登録】や【管理】の作業。しかし、利用者がスムーズに本を見つけられるのはこうした地道な努力のおかげです。 たとえば、この本がどこにあるか、今貸し出されているかどうか、などを図書館公式のデータベースのようなもので調べたことはないでしょうか? 

OPAC(Online Public Access Catalog)とは、図書館の蔵書をオンラインデータベースに登録することにより、利用者がオンライン上で検索できるよう公開した電子目録です。これにより、ネット上で所蔵の有無や貸し出し状況を調べられるのです。

学術リソース管理係(図書)が、いかに図書館業務の根幹をなしているか、お分かりいただけたでしょうか? 

 

編集後記

「本のプロフェッショナル」に近づきたい。体験の最後に、沼嵜さんが口にされた言葉です。学生や教員の学び、研究のために何ができるか?を常に考えてお仕事されている附属図書館職員のみなさん。体験を通じて改めて感謝の念が湧いてきたとともに、今まで以上にこの「知識の宝箱」を使いこなしたいと思いを強くしました。

第3弾まで続いた司書体験シリーズも、この記事をもって一区切りです。我々が普段何気なく利用している図書館も、裏ではこんなにもいろいろな方が関わっているんだ、という発見をしていただけていたのであれば、これ以上の幸せはありません。東京学芸大学附属図書館はもちろん、他のさまざまな図書館、司書というお仕事に関しても、ぜひ興味を持っていただき、今まで以上にフル活用していただければ嬉しいです。

 

取材協力/東京学芸大学附属図書館