
YOUは何しに学芸へ?
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YOUは何しに学芸へ?
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もうすぐ3月です。受験シーズンも終わりに近づいてきました。どうか最後まで諦めないで。みなさんのこれまでの努力は無駄になることはありません。目標に向かって駆け抜けてください!
さて、今回のゲストは、東京学芸大学大学院の教育支援協働実践開発専攻 教育協働研究プログラムのすがらさんです。2024年7月には特撮研究のシンポジウムを開催するなど、驚くべき行動力を持つすがらさんの素顔に迫ります。
すがらさん
修士課程 教育支援協働実践開発専攻 教育協働研究プログラム1年
2001年生まれ。岐阜県出身。
高校生のころから芸名を用いてシンガーソングライター・映画監督として活動する傍ら、学部生時代はE類生涯学習コース(現生涯学習・文化遺産教育コース社会教育専攻)。現在は大学院で「特撮アーカイブ」(特撮で使われる資料の保存)について研究をしながら、explayground「特撮研究ラボ」の代表を務める。好きな特撮作品は『新幹線大爆破』『ゴジラ対ヘドラ』など。
東京学芸大学を志望した理由を教えてください!
すがらさん:父や曾祖父が教育者だったこともあり、小さいころから漠然と教育に興味を持っていました。ですが高校3年生のころ、受験勉強のための授業に嫌悪感を抱いてしまったんです。そして、本来教育って何なんだろう?と真剣に考えるうちに、教育を包括的に研究していく仕事に就きたいと思うようになりました。当初は地元に残る気でいたのですが、紆余曲折あり地元を出ることにしました。東京学芸大学を見つけたきっかけは、インターネットでした。教育のことを研究したい、でも学校教育ではない…。そんな思いで検索をしていると「生涯学習」という言葉がヒットして、それを学べる東京の大学を調べたところ、東京学芸大学にたどりつきました。
学部生時代に経験したこと、楽しかったことを教えてください!
すがらさん:1年生の時、オンライン上でドラマを作りました。当時コロナ禍で、表現分野は活動が制限されとても難しい状況にあったり、大学生が感染源といった情報が流布したりしていることが本当に嫌でした。新型コロナウィルス感染症が世界中で爆発的に流行し始めた時期で、その影響もあり、誘われて入った映画制作団体の企画も頓挫してしまいました。そうしたら思いがけず僕がその団体の代表をやることになったんです。そこで僕の反骨精神と、任された団体を何としても存続させたい気持ちで、「人がいなくても作れるドラマ」を作ろうと力を入れて映画制作に取り組みました。
2年生では、学芸大生が発信している「TGUラジオ」(→edumottoが取材した記事はこちら)の企画やテレビのインスタントラーメンのCMに出演しました。TGUラジオは初回から20回ほど出演しました。そこで出会った方々とは今でも付き合いがあるので、本当にいい経験をしました。また、CMに出たことで映像業界の仕組みや雰囲気を知ることもできました。
CMをきっかけに知名度も上がり、この機会を無駄にしたくなくて、3年生では映画を作りました。この映画制作を通して、できないなと思うことこそ、いろんな人の応援をもらうことで、できることに変えられると学びました。良くも悪くもわがままになりました。これらの経験は、今の行動力にもつながっています。
大学で興味深かった授業は何ですか?
すがらさん:博物館の授業です。その授業で、博物館の展示が意図的に人間が置いたものであることを知りました。それぞれの博物館によって伝えたいメッセージの違いに気づけるようになれたので、とてもよかったです。私は観光地に行くとあえて地元の人向けに作られた博物館に行きます。そこでは本当に素直なその街の歴史を知ることができます。地味ではあるんですけど、すごい勉強になると思います。ぜひ行ってみてください。
現在研究テーマが「特撮のアーカイブ」とのことですが、そのテーマに決めた経緯を詳しく聞かせてください!
すがらさん:学部の卒業論文の研究テーマを考え始めたことがきっかけです。私が興味のある映画に関連するものからテーマを考えていたら、特撮がいいなと思いました。小学6年生の時、特撮の展示イベントで、特撮技術が日本文化として紹介されていたことに感動しました。この出来事が、現代のものを未来のために残していくことに関心が湧いた瞬間だったように思います。
今までの資料は土器や石器など、残る素材だったからこそ掘っていたら偶然見つかった!ということがあったと思うんですけど、デジタル化が進む現代は、形として残りにくい時代になっていくと思います。何も残っていない空白の時代ができた、という状況を食い止めるのが、自分たちの役目だと思っています。特撮の技術は教科書があるわけではないので、次第に知っている人がいなくなってしまう。なので、今残すことが重要です。特撮アーカイブに関する研究を通じて、現代の他の文化も残るようになるといいなと思っています。
教育協働研究プログラムでは、特撮アーカイブをどのように研究されるのですか?
すがらさん:博物館学の視点から、特撮のアーカイブについて研究しています。具体的には、特撮の技術やノウハウの保存です。そういった自分の研究を生かしたワークショップを学校や地域の方々と協働し取り組んでいきたいと考えています。また、特撮の資料などを活用して子どもたちと映画を撮影するワークショップを構想していて、これらの研究を通じて新しい教育の形を追究していきたいです。そうすることで、教育と特撮資料の保存の両立を実現させたいと思っています。
特撮資料を活用したワークショップ。2024年11月17日に学芸大学にて開催されたHIVE棟グランドオープニングイベント「験祭(あかしさい)」の様子
今後の進路を教えてください!
すがらさん:当初は博士課程に進む予定でしたが、エンタメ系に就職します。仕事をしつつ、特撮アーカイブや現代文化を未来に残す活動は続けていきたいと考えています。実は特撮とアニメは相互に影響を与えています。特撮が研究されないままだとアニメ研究も途中で頓挫してしまう可能性があります。なので、日本の文化史をとらえる上で、研究が進むアニメに後れを取らないように、特撮の研究が欠かせないと思っています。また、自分にとっての息抜きになっている、映画や音楽などの創作活動も続けたいですね。
受験生や学芸大生へのメッセージをお願いします!
すがらさん:教育って学校だけじゃなくて、たとえば博物館や公民館、家庭の中にもあるので、もっと視野を広く持って学んでほしいと思います。学校だけで考えると、どうしても行き詰まることがあると思うので、そういった時に見方を変えられるといいのかなと思います。
すがらさんの特撮に対する強い想いがひしひしと伝わってくる、そんな取材でした。本当に数々の経験をされていて、畏敬の念を抱くとともに、見習わなくてはと思う部分が多かったです。また、これからはデータの時代だからこそ、残すという意識がより一層大事であるということを聞いた時にはハッとさせられるような思いでした。すがらさんが特撮から新しい教育の形を創造しているように、みなさんも学芸大学で自分だけの新しい教育の形を創造してみませんか!
すがらさん主催「特撮研究シンポジウム」のリポート記事はこちら
取材・編集/池上尚冴
イラスト/居倉優菜
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