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2023年6月に開催された日本の算数・数学の授業研究を学ぶイマージョンプログラムに参加した海外の先生3人に、日本の授業研究を体験してどうだったか、質問してみました! カリフォルニア州サンフランシスコで教員として働いているティナさんとジャスティンさん、イギリスの大学で数学講師をしているホリーさんです。授業研究を一言で表すと?日本と海外の授業研究の違いとは?など、さまざまな立場から、海外の先生の生の声を聞いてきました!
編集チーム:日本の授業研究を一言で表すと、どのような言葉が思い浮かびますか?
ジャスティンさん:「inspiring」(感動的)です。授業研究は、どれほど経験やキャリアがあったとしても、教師として挑戦でき、夢中になれるような専門的能力を身につけることができます。全員がとても楽しく学んで知識を深められることが感動的だと思いました。
ティナさん:「divergent」(異なる方向性)です。研修のシステムがアメリカと全く違うように感じました。
ホリーさん:私も「inspiring」(感動的)です。イギリスでは日本に比べて非常に表面的で、先生たちは自分たちのやりたい方向に進みがちです。日本では目標・目的・理由などがすべてつながっていて、先生間でコミュニケーションがとられていて、素晴らしいと思います。
勤務しているヒルクレスト小学校の授業研究の現状について話すティナさん
編集チーム:日本と海外の授業研究の違いは、どのようなところにあると思いますか?
ティナさん:アメリカのサンフランシスコでも、授業研究をもっとやろうと試みて、授業研究を実践する学校も増えています。しかし、リーダーとして引っ張っていこうとする人がいないと、なかなか進まないところが日本との違いだと思います。
ホリーさん:イギリスも国全体に浸透していなくて、授業研究を習慣づけようとしても、私がその場にいなければ、他に推進できる人がいないのです。日本は授業研究が文化として存在するので、誰か一人が率先して引っ張る必要がありません。イギリスでは、授業研究を推進していく人がもっと必要です。
ジャスティンさん:私の学校では、校長先生が授業研究を優先事項としてとらえていて、少人数の教師のチームでやったことを共有し、成長してきました。ですが、アメリカで授業研究を行っているすべての学校が管理職の支持を得ているわけではなく、個人で研究している人もいます。だからこそ、私たちはチームのリーダーとして授業研究のステップ・方法を理解する能力を向上させることに取り組んでいます。一方で日本では、個人としてではなく、先生同士がチームとなり授業研究に取り組むことが仕組みとして定着しています。
数学の問題の解き方について話すホリーさん
編集チーム:プログラムを通してどのようなことを感じましたか?
ジャスティンさん:初めて参加した時に難しいと思ったのは、子ども同士の意見交換や話し合いを通して、学びを深める活動をすることです。特に、子どもとの会話のバランスを学ぶのは新しいスキルで、習得するのに苦労しました。
ホリーさん:日本の子どもたちは数学の問題を解く時、説明して推論する、その過程に意味を見出すことに慣れていてとてもすごいと思います。イギリスでは「これが方法です、従って解いてください」という方法の部分に焦点を当てていて、子どもたちは後で自分の考えを説明するのに苦労することがあります。
ティナさん:授業研究をするとより広い視野で教育を見ることができるようになりました。「明日の授業何しよう」とかではなく、クラス・学年全体でこれからどのようにしていくかを考えることが、とても重要だと思いました。日本では、学校から国全体レベルとして、どうすればより良い教師になれるかを考えていて、そのために多くのことが共有されていると感じました。アメリカでも、もっと多くの人がより良い先生として成功・成長できるように、共有して広まってほしいです。
17年のキャリアを持ち、ジョン・ミュラー小学校で3年生の担任をしているというジャスティンさん
編集チーム:ジャスティンさんは今回3回目の参加になりますが、なぜ3回も参加しようと思ったのですか?
ジャスティンさん:授業研究のさまざまな側面に焦点を当てていて、常に学ぶことがあるからです。17年間教師をしてきて、基本的に(少なくともアメリカでの経験では)授業研究が導入される前は、専門的な能力開発やサポートのほとんどは新人の教師に向けたものでした。そのため、自分には「教師としての挑戦」がありませんでした。しかし、このプログラムでは、自分自身で挑戦し、常に教師として大きく成長し続けることができます。自分が何をどう教えているのかを、より意図的に、深く考える方法を学ぶことができました。毎回新たに学ぶことがあり、とても刺激的だから、何度も参加しています。
編集チーム:日本の授業研究を行ってみて、もっと良くするために改善できると感じたことはありますか?
ティナさん:問題を解く時、子どもが個人で行う時間が多いと感じました。いくつかの授業では、子どもが協力して問題を解いていて、子ども同士が一緒に取り組んでいた授業の方がスムーズにできていました。そういった仲間同士で協力し合う場面も大切だと感じました。また、「これは試した?」とか「このアイデアはどう?」など、先生がスキルや知識の面で、子どもたちを手伝ってあげるようなアプローチももっと見てみたかったです。
ホリーさん:同じ科目の授業だけではなく、異なる授業科目がどのように結びついていくのかが考えられると、もっと良くなると思いました。
ジャスティンさん:僕は特になかったよ!(笑)
先生方とのインタビューの後、来年から数学の教員として働くことを伝えると、「素晴らしいね。一緒に頑張ろう」と声をかけてくれました。今、大学で学んでいることや、先生になった後も続いていく授業研究が世界と繋がっていると考えると、教員の学びも世界共通なのだと気がつきました。
算数・数学は変わらないものですが、「どう教えるか」はこれからもさまざまな研究が行われて、変化し続けると思います。私は、授業を改善・向上していける「授業研究」を活用して、自分自身で授業研究をリードできる存在になりたいと思いました。そのために、卒業までにもっとたくさんのことを学びたいと強く思いました。
〈この記事の前編はこちら〉
〈関連サイト〉
国際算数数学授業研究プロジェクト IMPULS
取材・編集/大久保里咲、坂本実優、菅谷美月
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