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Library of the Year 2023優秀賞受賞【Möbius Open Library Report】

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2023年はMöbius Open Library(メビウス・オープン・ライブラリー:略称MOL)にとって記念すべき年になりました。「東京学芸大学附属図書館とExplayground推進機構MOL」が、Library of the Year 2023優秀賞を受賞しましたのでご報告します。

Library of the Yearとは

「Library of the Year」は、全国各地の図書館等の知的情報資源に関わる機関・組織が行っている先進的な取り組みを対象として、NPO法人知的資源イニシアティブ(IRI)が選考・授与しています。公共図書館・大学図書館・学校図書館・国立機関などの設置母体を超えて、優れた図書館等の活動を称賛する日本で唯一の賞です。2006年から毎年実施され、2023年で18回目とのことです。”良い図書館を良いと言う”という標語のもとに、図書館等が行っている活動を選考し、他の図書館の参考になる先進的な事例が表彰されます。

「東京学芸大学附属図書館とExplayground推進機構MOL」は、多数の候補の中から、第1次選考、第2次選考を経て「優秀賞」に選ばれました。Library of the Yearの18年の歴史の中でも大学図書館への授賞はあまり多くはありません。その意味でも嬉しい受賞でした。

東京学芸大学附属図書館とMOLの取組

MOLは、Möbius Open Library(メビウス・オープン・ライブラリー)の略称です。東京学芸大Explayground推進機構のラボの一つとして、2019年9月から活動を行ってきました。

MOLでは、コンセプトとして「知の循環」の再構築を掲げ、図書館と知の未来を志向し、「遊びながら学ぶ」というExplayground推進機構の考え方を取り入れながら、 テクノロジーによる変化を促す取組みを行ってきました。利用者が求めていることを察知してスピード感をもって実行していくのが特徴です。附属図書館の職員を中心としながらも、民間企業のMistletoe Japan、学内の附属学校教員という多様性のあるメンバーでの協業により、固定観念を捨てて自由な発想でプロジェクトに取り組んでいます。若手もベテランも関係なくアイディアを出 し合い、楽しみながらの活動です。

最初は数人で始まったMOLプロジェクトのコンセプトは、次第に附属図書館の全体にも浸透し、本務においても、変化を恐れず、サービスを改善するアイデアが次々に生まれるようになりました。「デジタル書架ギャラリー」(MOLレポ vol.8, vol.13)「ラーニングコモンズ増築」(MOLレポ vol.16 )「デジタルアーカイブの利活用」(MOLレポ vol.19)「学芸本ガチャ」「E-TOPIA」などなど、さまざまなプロジェクトを展開しています。”デジタル社会の教育を支える「知の循環」の再構築”というキーワードは、2021年から附属図書館の公式のビジョン「東京学芸大学附属図書館の使命と目標」にも取り込まれてました(MOLレポ vol.15)。

受賞式&最終選考会に参加

Library of the Year2023では2023年8月23日に行われた第2次選考で今年の優秀賞などの各賞が決定し、授賞理由が発表されています。受賞式と最終選考会は10月25日にパシフィコ横浜で開催された「図書館総合展」で行われました。大賞(審査員5名による投票)とオーディエンス賞(来場者による投票)が決定するということで、優秀賞を受賞した4機関がそれぞれの取り組みを紹介します。ななたんとヨコは、この日のために制作したTシャツを着てプレゼンテーション(当日発表資料)に臨みました。会場ではフジムーと新入部員のぬまちゃんも応援しています。結果的に、大賞・オーディエンス賞は逃しましたが、審査員のみなさまからは、デジタル書架ギャラリーやデジタルアーカイブの利活用を高く評価するコメントがあり、賞状と木製のトロフィーもいただきました。

なお、当日はMOLの他にも素晴らしい活動が数多く紹介されました。大賞とオーディエンス賞をダブル受賞した「みんなの図書館さんかく」や、学芸大附属学校も参加している「学校図書館スタンプラリー」など、さまざまな図書館活動のポテンシャルを感じる一日でした。選考委員長のコメントも公表されています。

プレゼンテーションの様子

賞状とトロフィーを手にするMOLメンバー

Library of the Yearの収穫

裏話を少しだけしておきましょう。Library of the Yearは”良い図書館”を自薦・他薦することができるのですが、若手のヨコが「学芸本ガチャで自薦応募したい」と希望したことから始まっています。「学芸本ガチャ」はおもちゃの「ガチャガチャ」によって本が推薦される仕組みで、普段読まない本との出会いを促すことを目的として実施している企画です。(詳細は『カレントアウェアネス』というオンライン雑誌記事を参照)。Explaygroundで培った「遊び心」をもった企画でしたし、手法としてもMOLのPechaKucha from 3Booksのランダムくじ引きの発想(MOLレポ vol.3)が活かされていました。しかし、せっかくLibrary of the Yearに自薦するであれば、「学芸本ガチャだけではなく、少し大きな取組みにできないか」とアドバイスしたところ、ヨコが持ってきたのが、附属図書館の取組み全体をMOLの「知の循環」というキャッチフレーズで括るという案でした。

優秀賞の受賞が決まって、プレゼンテーションのスライドを作る過程では、ヨコを中心に、近年の附属図書館が実施してきた事業をMOLのコンセプトマップにプロットする作業を行ってもらいました。ヨコ・ミカンの初期の頃から活動しているメンバーだけでなく、新入部員のぬま・ぐも・にいも加わって、しかも、ななたん・ちょびのようなベテラン抜きでの話し合いです。若手・中堅職員が自分たちの仕事が「知の循環」のどこに位置づいているのかをあらためて考える良い機会となりました。出来上がったプロジェクトマップは今回の受賞のもう一つの大きな収穫だったと思っています。

学芸大図書館のプロジェクトマップ

スライドの作成にあたっては、初期メンバーにも今までの活動を振り返るコメントをもらいました。ベテランのちょびは「若手が臆せず挑戦することで仕事がテンポよく進み、職場の活気が増している。特にコロナ下の苦しい状況中ではMOLが希望の光だった。今後の活動も楽しみだ」と振り返ってくれました。図書館メンバーの活動に伴走してくれていたMistletoeのフジムーからは「組織の改善活動は、ビジョンから施策にブレイクダウンするタイプか、現場の思いつきやハックを積み重ねるタイプかのどちらかが多いと思いますが、MOLはその両方で、ビジョンと現場の両方の視点を兼ね備えているメンバーが両方を行き来しながら進めていて、その行き来自体も知の循環になっているところがユニーク、かつそれを遊び心が駆動しているというのがさらにユニークだ」とコメントがありました。

ななたんにとっても、Library of the Yearの受賞は、MOL旗揚げからの4年間の活動と附属図書館の職員全員の日々の奮闘にご褒美をいただいたような気がしています。今回の受賞を機に、私たちはこれからも力強く走り続けることができるでしょう。来年も進化する「東京学芸大学附属図書館とExplayground推進機構MOL」の姿に期待してもらいたいと思います。

(文責:ななたん)