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教育の未来

“好きな色”を選ぶことができる社会へ

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Twitterで話題となったこのツイートについて、皆さんはどのような感想を持ちましたか?

ーなんかさ、ピンクが好きで、プリキュアとかプリンセスが好きで、ズボンよりもスカートが好きでランドセルも赤が良くて、料理とか裁縫が好きな女の子が生きづらくない?ー

(出典:@doki_batankyu/Aug 11. 2022)

ジェンダーレスやジェンダーフリーという言葉が浸透しつつある社会で、「かわいい」や「かっこいい」に振り切ったモノ自体が消えてしまい、悲しむ人がいるという事実に私自身気付かされました。

このような話は、ジェンダー問題にカテゴライズされます。

UN Women 日本事務所はジェンダーについて以下のように定義づけています。

“ジェンダー(Gender):ジェンダーとは、男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会、女性と男性、女児と男児の間における関係性、さらに女性間、男性間における相互関係を意味します。こういった社会的属性や機会、関係性は社会的に構築され、社会化される過程(socialization process)において学習されるものです。これらは時代や背景に特有であり、変化しうるものです。”

今回の、教育の未来の記事では、ジェンダーを“ランドセルの色”という観点から捉えていきます。ぜひ皆さんも一緒にジェンダーについて考えてみませんか。

ランドセルの人気カラーランキングから見えてくる実態

皆さんは何色のランドセルを使っていましたか?

私は、朱赤でした。水色のランドセルを使っている友達を羨ましいな〜と思った記憶があります。ランドセルといえば、「黒と赤が定番カラー!」だと思いがちですが、最近のランドセル売り場には豊富なラインナップが取り揃えられています。

ところが、ランドセル購入に関する調査2019年と2022年の結果をグラフにしたところ意外な結果が出ました。

(「一般社団法人 日本鞄協会 ランドセル工業界」が行うランドセル購入に関する調査2019年と2022年を元に執筆者が作成したグラフ。)

女児に関しては2019年と2022年で1位と3位が入れ替わっていますが、いずれにしても明るく鮮やかな色が上位に来ています。一方男児は、2019年と2022年で順位の変動は見られず、両年とも黒が半数以上を占めています。

赤と黒の人気はまだまだ根強く、特に男児の方がより顕著な結果であるということがこのグラフから分かります。なぜ、男女間の結果にこのような違いが生まれるのでしょうか。また、選ぶ色の傾向に違いがあるのはなぜでしょうか。

メーカー・ブランドごとの特色

そこで、各ランドセルメーカー・ブランドのサイトに着目してみました。

21社中11社のランドセルメーカー・ブランドのサイトには、“男の子(向け)・女の子(向け)/男の子に人気・女の子に人気”という欄が設けられていました。

しかし、ジェンダーレス・ジェンダーフリーの動きに伴い、いくつかのメーカー・ブランドでは、男女関係なく使いやすいユニセックスデザインが登場しています。

土屋鞄製造所では、“自分らしさの光る 自由な色選びを”をテーマにした「RECO」シリーズを販売しています。RECOというのは、「認める」の意味を持つ“recognize”に由来しています。

“ヒーローに憧れる男の子が赤色を背負ったり、少しだけ大人びた女の子が黒色を背負ったり。自分だけの「好き」を大切にできるように。”

出典(“「RECO(レコ)」シリーズ – 土屋鞄のランドセル)

「その子の個性を認めることで『その子らしさ』を育むきっかけとなる」recoシリーズには、そんな想いが込められています。

“大人でも持てる色”ということもあり、そのカラーは大学生になった私も心惹かれるものばかりです。

着用モデルには、男の子が赤いランドセルを背負う姿など、ビジュアル面における変化も見られます。自由な色選択を後押しするには、商品そのものだけでなく見せ方が重要であることを実感しました。

今後のランドセル選びにおいて、自分が好きな色を選ぶ“自己表現・ファッション的な側面”がますます強まっていくのではないでしょうか。

オーダーメイドランドセルの存在

多くのメーカー・ブランドでは、オーダーメイドのランドセルを販売しています。

オーダーメイドのランドセルは、大きく分けて3つ(本体・ヘリ・ステッチ)の色を自由に組み合わせることができます。これにより、黒×赤やベージュ×深緑などの多様な組み合わせが実現できるようになりました。最近では、ペールトーンやくすみカラー、メタリックカラーなど今までになかった色のランドセルが次々に登場しています。

全てのニーズに対応した商品を作ることは簡単ではありません。だからこそ、オーダーメイドランドセルは、自分の好みを自由に反映できるという意味で、1つの選択肢になるかもしれません。

お気に入りのランドセルを使って、6年間楽しく過ごしてもらえたら嬉しいですね!

色と性別の結びつき

近年、女の子に水色や紫のランドセルの人気が高いのは、「塔の上のラプンツェル」や「アナと雪の女王」のエルサをはじめとしたディズニープリンセスの影響があるとされています。流行によって人気の色が変動するのは女の子の色選びにおける特徴なのかもしれません。

流行に左右されづらい男の子ですが、どうやら好きな色で選んでいるわけでもなさそうなのです。というのも、赤色は子どもに人気の戦隊シリーズの主役であることが多く、憧れを持つ男の子が多い色です。好きな色ランキングにおいても赤は男児・女児ともに人気があります。

しかし、ランドセルとなると、男の子が赤やピンクを持つことに否定的な考えを示す人が一定数いることも事実です。男の子のランドセルの傾向は、日本のジェンダー問題における1つの指標となるのではないでしょうか。

実際に、色と性別に結び付きがあるかを調べるため、大学生を対象にアンケートを取りました。また、男女別に自分が好きな色についても聞きました。

(回答数46人※複数回答あり)

色と性別の結び付きは現時点において「ある」と言えます。この結果は、ランドセルの人気カラーランキングとも似た傾向を示しています。

しかし、好きな色に関しては、男女共に票が割れており、好きな色に性別は関係ないということが分かりました。

編集後記

もし、将来自分の娘が黒や青のランドセルがいいと言ったら?息子がピンクや赤のランドセルがいいと言ったら?果たして自分はその意思を尊重してあげられるのか。自由な選択をすることで不利益を被るような世の中ではないだろうか。この記事を書きながらそんなことを考えていました。

長い歴史の中で構築された色に対する固定的なイメージは、簡単に崩れるものではありません。それでも、自由な色の選択を認め、推奨していく社会を作ることはできるのではないでしょうか。

今回の記事では、ランドセルの色をテーマに扱いましたが、決して黒いランドセルの男の子と赤いランドセルの女の子を否定しているわけではありません。

どれがいいか悪いかではなく、みんなの“好き”を認めること、みんなの“好き”が共存していくことが大切だと私は考えています。

世界は色に溢れています。多彩な色を自らの意思で選択し、その選択が尊重されること・全ての人がどんな選択にも不安や生きづらさを感じないこと。

このような社会を実現するために、私たちは何ができるのでしょうか。SDGsの5番目のゴールには、「ジェンダー平等を実現しよう」が定められています。

この記事が、1人でも多くの人がジェンダーについて考えるきっかけになったら嬉しいです。また、日常の“あたりまえ”を疑い、考えることの大切さを実感してもらえたらいいなと思います。

今後も教育の未来では、自由な発想と学生視点の記事を書いていくのでどうぞお楽しみに!!

 

取材・編集/松永裕香
イラスト/片山なつみ