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みちしるべ
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東京学芸大学の卒業生を訪ねる「みちしるべ」。今回は2023年に卒業し、現在株式会社ベネッセコーポレーションの小中学校営業部に勤務する徳田さんです。在学中から学校の先生を応援する仕事がしたいと考えていた徳田さん。現在は、地方都市の小中学校でICTの活用を通して学びを充実させる方法を、現場の先生たちと一緒に考えています。財政難に苦しむ自治体の現状と直面しながら、自分にできることは何かを模索する姿に耳を傾けました。
徳田美妃 さん
2023年B類音楽専攻卒業。学生時代から自分の学部の学習にとどまらない活動をし、edumottoだけでなく、教育実践を発信するEDUPEDIA(NPO法人ROJEでの活動)、教育以外にも幅広いテーマを扱う朝日新聞DIALOGにも注力していた。これらの活動から、ビジネスとして教育事業へ関わりたいと考え、ベネッセに就職。2023年ベネッセ入社。
徳田さんはベネッセに入社後、出身地の東北地方の営業を担当している。GIGAスクール構想によって小中学生全員にタブレット端末が行き渡ったが、それらのデジタル教材を有効に活用する方法を市町村に提案するのが主な仕事だ。
タブレット端末を文房具のように使えると、できることは大きく広がる。たとえば、これまでは一人ずつ意見を発表し、それを先生が黒板に書いていく必要があった。端末を活用すれば、それぞれが書き込んだ意見を瞬時に全員と共有し、それを元に議論を深めることに時間をかけられるようになる。しかし、タブレット端末を活用するには、アプリケーションも含めて環境を整えることが必要だ。
「“モノ”があるだけでは使われないんです」
デジタル教材が積極的に取り入れられている都心部では予算も獲得しやすいが、地方だとそう簡単にはいかない。実際に東北地方の自治体は財政難に直面していた。「良いのは分かっているが、予算が足りない…」。教育長や指導主事らと学校現場を巡り、先生たちと話していると、何度もその壁に突き当たった。また、学校ごとに違った端末やアプリケーションを使用しているため、教員は異動の度に新たなアプリを覚え直す必要がある。教員のやる気やスキルに依存してしまうような学校も多く、現場のリアルは想像以上に厳しいものだった。理想と現実の間で葛藤する先生たちに寄り添いながら、徳田さんは模索を続けている。
徳田さんは、ベネッセに就職した理由を二つ語る。
一つは、収益を上げながら教育を持続的に発展させたいと考えたからだ。学生時代からNPOなどでさまざまな活動に参加してきた徳田さんは、教育分野における取り組みは、無償のものが多い印象だと言う。NPOは企業や行政がアプローチしにくい領域へ関われる魅力もある一方で、資金調達が難しく、補助金に頼らざるを得ないこともある。そういった活動に魅力ややりがいを感じつつも、教育に持続可能な関わり方をしたいと思っていた。そんな中でこの道を選んだのだという。
もう一つの大きな理由は、地域の良さを生かした活動がしたいと考えるようになったことだ。きっかけは、一緒に大学の国際寮に住んでいたガーナの留学生から「日本の伝統文化の面白さを知りたい」と声をかけられたことだった。高校卒業後、「地元青森から出たい!新しい世界を見たい!」という思いから上京した徳田さん。留学生からの質問に即答できずにいたが、ふと子どものころから慣れ親しんだねぷた祭りが頭に浮かんだという。高校時代にクラスで一台ねぷたを制作し、市内を練り歩いた経験を話したところ、留学生は身を乗り出して「ねぷたを見てみたい」と言い出した。また、別の留学生と青森を訪れた際に、徳田さんがねぷたの展示を案内したこともあった。
「地元の伝統文化は、外から見るとこんなにも面白いものなのか」——
「地方に貢献したい」という思いが芽生えてきたのは、その時からだという。地方の学校現場で頑張る先生を応援する仕事に取り組みながら、徳田さんは先輩たちと新たな事業へのチャレンジを始めている。
高校時代に徳田さんのクラスが作成したねぷた
2024年3月、ベネッセは青森県むつ市と包括連携協定を結んだ。
ベネッセが提供するAIドリル教材と総合学力調査を活用することで、先生方が今まで児童生徒の学習理解度を把握することにかけていた時間を、子どもたちと直接関わることに充てることができるようになるのではないかと期待されている。
徳田さんは、企業と自治体が包括連携協定を通じてよりよい教育の実現を目指すとともに、そこで築かれた関係性が、伝統的で豊かな地域のリソースを生かした取り組みの足がかりになることを願っている。
これからチャレンジしたいことについて聞くと、STEAM教育への関心が浮き彫りに。
小さいころから音楽に親しんできた徳田さんは、音楽の響きに物理や数学の美しさを感じるそう。そんな面白さを持つ音楽と他の教科を組み合わせながら教育を追求したい、という思いを語った。
「仕事の枠にとらわれず、さまざまな教育のトレンドに関わっていきたいと思っています」
徳田さんは、視野を広げてキャリアを見据えている。
企業に就職し、教育に関わり続ける徳田さん。やってみたいという気持ちを原動力に、目の前の課題に対してあらゆる角度から全力でアプローチする。大学時代の学びを活かしながら奮闘する、エネルギーに満ちた徳田さんの姿がとても印象的でした。
教育へのアプローチの仕方は決して一本道ではありません。ここ学芸大学で、心が躍るような学びを一緒に探しませんか?
取材・編集/H.E、赤尾美優、斎藤育
写真提供/徳田美妃さん
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