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知識を集めて未来へ。大学図書館の司書のお仕事って?

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今回edumottoは、東京学芸大学附属図書館で司書体験を行いました。司書のお仕事は私たちの学びをどのように支えているのでしょう?司書を目指している方、司書について詳しく知りたい方、必見です!

そもそも大学図書館ってどのような場所?

引用:東京学芸大学附属図書館 「運営方針・理念」 
(閲覧日:2025年1月2日)

街中の図書館、学校図書館、大学の附属図書館など、同じ図書館でも使命によって蔵書も異なります。
この記事では附属図書館の舞台裏(「学術リソース管理係(雑誌)」と「アーカイブ係」)にせまります!

研究を支える学術雑誌のフィールド 

私たちがまず体験したのは「学術リソース管理係(雑誌担当)」。この係は、学術雑誌の発注・管理を行う。
学術雑誌とは、研究成果をまとめた論文を掲載する雑誌のことで、学術団体(学会)や研究機関、学術出版社などが発行している。私たち大学生も、レポートや卒論などで先行研究を調べるときによく利用する。令和5年度末時点で、その蔵書数は11,000種を超える。また、電子ジャーナル(電子媒体の学術雑誌)は約10,000タイトルを閲覧できる。

学術雑誌が図書館の書架に並ぶまで

私たちが学術雑誌を読めるようになるまでにどのような作業があるのだろう?学術リソース管理係担当の田村優大さんに教えていただきながら、その過程を体験した。

※この他に、雑誌の選択や注文、書店への支払いなども行なっている。

それぞれの作業を詳しくみてみよう。

①検品
発注した雑誌が届いたら、まず「検品」からスタート。パラパラとページをめくり、落丁や乱丁がないか確認する。

②受け入れ
コンピュータの図書館業務システムを使い、タイトルやISSN(雑誌等の逐次刊行物を識別するための国際的な標準番号のこと)などの情報が、表示画面と一致しているかチェックする。新しく発注した雑誌は、このシステムに情報を入力し、「所蔵巻数」の項目に新規購入分を追加することで受け入れが完了する。
表紙から巻、発行年月など多様な情報を見比べる必要があるため、とても集中力を必要とする作業だ。

貸し出し可能な雑誌の中には、バーコードの作成が必要な雑誌もある。
業務システムで番号登録を行うと、自動でバーコードがプリントアウトされる。図書館の本でよく見かけるバーコードが、このように瞬時に生成されることに驚かされた。

③装備
バーコードを貼った後は、表紙に蔵書印を押す。この印が、「学芸大学附属図書館の資料」という証になる。表紙の文字と重ならない場所に押すことに少し緊張したが、押してみると大きな達成感があった。

学術リソース管理係のお仕事を教えてくださった田村さんに、学芸大生へのメッセージを伺った。

田村さん:雑誌の仕事は紙の雑誌、電子ジャーナル問わず、大学の知識基盤を支える大切な役割を担っています。皆さんが研究や勉強に励む際に雑誌のことをちょっとだけ気にかけてみてください。図書館に来たり、家から電子ジャーナルやデータベースを使ってみたりして活用していただければ幸いです。

次世代の学生へ学問知識をつなぐ「アーカイブ」とは

次に担当したのは「アーカイブ係」。アーカイブ係では、図書館資料や学内の研究成果を館内の書庫やデータベース上で蓄積し、管理・公開している。これによって、現代の利用者に資料を使ってもらいながら、未来の学生や研究者も資料を利用できる環境を維持することを目的としている。

別世界?図書館の地下で見つけたものは…?

蓄積された資料を探るべく、アーカイブ係担当の南雲修司さんと向かったのは地下の書庫・貴重書庫。そこは先人の学者たちの功績を将来にわたって守り続ける拠点だった。

書庫を回ると、江戸や明治に出版された本も多数発見。今年の7月に館内で開催された企画展「出会い、学ぶ『源氏物語』」に関する和装本も発見した。

こうした長い歴史を持つ資料はどのように保存されてきたのだろうか?
南雲さんは「資料のダメージ防止のために、館内に害虫トラップを設置したり、温湿度を厳格に管理したりしている」と語る。後世の利用者も資料を活用できるように、保存環境の整備が行われていることが伺えた。

さらに図書館では、こうした資料をデジタル化し、本学のデジタル資源収集・公開プラットフォーム「教育コンテンツアーカイブ」(https://d-archive.u-gakugei.ac.jp/)で公開している。資料をオンラインで公開することで、現物の資料にダメージを与えることなく、資料の利用を可能としている。

インターネット上で論文が読めるようになるまで

アーカイブは過去から引き継がれた資料だけでなく、現在進行形で生み出される研究成果も含まれる。
次に、学芸大学内での研究の蓄積を探るべく、「機関リポジトリ」にデータ入力する作業を行った。

このデータ入力によって、インターネット上から論文にアクセスできるようになる。
業務システムから、タイトルや論文本体のリンクなどを設定していく。登録完了画面まで辿り着くと、「これでみんながこの論文を読めるようになったんだ…!」と、誇らしい気持ちになった。
こうした作業によって、学芸大学で創られた知が結晶化されていくのだと感じた。

最後に、案内してくださった南雲さんに、このお仕事への思いをお聞きした。

南雲さん:アーカイブ係での仕事は、資料をオンラインで公開して、世界中のどこからでもアクセスできるようにするというスケール感が魅力だと感じています。古くは江戸時代から多くの人の手によって綿々と守られ、引き継がれてきた資料が、現代の技術で世界中に広がっていく様子を思うと胸が熱くなります。皆さんも研究やご自身の学びにぜひ活用してください!

 

編集後記

図書館業務の中でも、特に大学図書館ならではのお仕事である、学術雑誌や機関リポジトリの業務を体験することができた。職員の方々のお力によって、私たち学芸大生や教職員、地域の人々はさまざまな情報にアクセスし、学びを深められていた。教育支援職を志すひとりとして、図書館のような「知の拠点」を整備することへの想いがより強くなった。

執筆/居倉 優菜
企画協力・写真提供/東京学芸大学附属図書館