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Vol.10 A類数学コース~学芸大生のリアル

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いよいよ12月になり、共通テストまで約1ヶ月となりました。志望大学の情報収集は進んでいますか?季節の変わり目は気温差も激しくなるので、体調管理に気を配りつつ、受験勉強に勤しんでくださいね。さて、今回のゲストはA類数学コース4年のなごれんさんです。A類(幼少の教員養成コース)で学びながら、今は中高の教員を志望するなごれんさん。さらには特別支援学校の教員免許取得も目指しています。
なごれんさんはどのようにして進路選択をされたのか。A類数学コース(以下A数)とはどのような学科なのか。この冬にぜひ読んでみてください。

なごれん さん

A類数学コース4年

趣味はマラソン。ハーフマラソン4回、フルマラソン1回出場している。大学での目標は100kmマラソンを完走すること。

やってみたい その気持ちを受け止めてくれた場所

教員を目指したきっかけと、学芸大学を志望した理由を教えてください。

なごれんさん:数学で問題が解けた時の達成感がとても好きで、大学でも、学問として数学を学びたいと思っていたため、理学部を進路の選択肢に入れていました。しかし、人と関わることが好きで、教員になりたい気持ちがありました。そこで、将来を見据えた時に、教員になるなら、教育についても深く学んでみたいという気持ちが芽生え、学芸大学に進学することを決めました。加えて、自分には中学生のころから陸上競技に打ち込んできた経験があります。学芸大学には、陸上に力を入れている学生が多いということも、志望校決定の大きな後押しになりました。

専門的な学びと仲間との支え合い

A数のカリキュラムについて教えてください。

なごれんさん:1年生は数学を広く基礎的に、2年生は数学の理論を本格的に、3年生は数学教育を中心に学びます。特に2年生では、与えられた定義をもとに証明するということが多く、苦戦しました。しかし、これを乗り越えて、専門性の面で数学に対して自信がついたように思います。

A数の魅力はなんですか?

なごれんさん:A数は65人程いるのですが、そこから約20人ずつの3クラスに分かれます。授業で難しい数学の問題に出会ったときには、みんなで図書館に集まり、一緒に取り組んでいます。自分が解けない問題の理解ができるだけでなく、友達同士での教え合いを通して、「どのような説明が伝わりやすいのか」と考えるきっかけにもなっています。一緒に過ごす時間が長いからこそ、A数の学生はすごく仲がよく、互いに高め合えるような関係性が築かれています。

学びと実践を重ねて ~本当の「分かった!」へ導くために~

印象に残っている授業を教えてください。

なごれんさん:数学教育の分野の「中等数学科教育法」という授業では、生徒の反応の予測について学びました。まず、自分たちで実際に中学数学の問題を解いてみて、中学生はどのようなところにつまずきそうか、どのような思考の過程をたどりそうかを予測します。次に、実際の授業のようすの映像を見て、自分たちの予測と実際の生徒の反応を比較する、という内容です。

3年次に行った小学校での教育実習では、自分たちの予測を裏切られることがたくさんあり、反応の予測の難しさを実感しました。たとえば、式で考えるのが適切な問題を、児童は図やグラフを使って考えていることがあります。児童の多様な考え方に触れられることは、純粋に面白いですが、そのような場面で、児童が数学的な本質を押さえることができているのかをくみ取るためには、自分自身が問題の学問的な本質をわかっていなければなりません。それができて初めて、その子の考え方のよさを理解できたと言えると考えています。容易なことではありませんが、反応を予測するのは面白くて好きですね。 

ゼミでは何を研究されていますか?

なごれんさん:卒業研究に向けてゼミを選択するのですが、A数では、大きく分けて、学問としての数学と、数学教育の二つの分野があります。数学教育の分野では、子どもたちが数学的な見方を獲得するための指導法や教育法、教材研究などを学びます。

僕は、学問としての数学を中心に学んでいて、今は卒業研究として、数学の「グラフ理論」を研究しています。図形の一筆書きについて、数学的に考えるというものです。たとえば、“口”は一筆書きができるけど、“田”はできません。こういったことを、数学的に証明しようとしています。研究に向けて基礎的な知識をつけるために、4年春学期はグラフ理論についてとにかく勉強していました。僕のゼミでは、複数人で一本の論文を作成するため、それぞれが詳しく勉強した内容を組み合わせながら、研究を行っています。

多様な人との関わりの中で、気付いた思い

なごれんさんが学びを続ける中で、モットーにしていることはありますか?

なごれんさん:人と関わるときに、相手の気持ちを理解しよう、というのが常に中心にあります。1年生のときに「特別支援教育の理解」という授業を受けたのですが、そこで、「障がいは人より大きい困り感」だということを学びました。

「相手の気持ちを理解し、その困り感に気付けるようになりたい。」そう思ったことがきっかけとなり、特別支援学校の免許の取得を目指し始めました。この視点は、どの校種で働くとしても、大事にしたいと思っています。

今後の進路はどのように考えていますか?

なごれんさん:数学の中高の教員として働きたいと思っています。さまざまな子どもたちと関わりたいという気持ちがあるので、将来的には、小学校や特別支援学校で働くことも視野に入れています。

授業や子どもたちとの関わりのなかで、常に目標を持って前向きに努力していきたいです。この姿勢が、自分自身にも生徒にもよい影響を与えられるのかなと思っています。

最後に、A数を目指す受験生に向けてメッセージをお願いします。

なごれんさん:学芸大学は、教育を学びたい意欲や、他者への思いやりを持っている学生が多く、過ごしやすい環境だと思います。また、小中高や特別支援教育について学べたり、いろいろな地方から学びに来る学生が多かったりと、自分の価値観や視野を広げることができるよさもあります。

先生方も、数学や数学教育に対して精通しているだけでなく、学生想いで、質問に優しく答えてくださるので、学びを深めるための環境が整っています。目標を持って頑張るみなさんには絶対にいい未来が待っています!自分を信じて、頑張ってください。

なごれんさんの学芸大学での一日

編集後記

教育にも陸上にも全力で向き合い、まさに文武両道の道を行くなごれんさん。
その姿からは、教員を目指しながら学問としての数学も学び続ける姿勢を崩さない、なごれんさんに通じる芯のようなものを感じることができました。数学と数学教育をつなげて子どもと関わりたい、そんな人におすすめできる学科です。

取材・編集/清水菜央・赤尾美優・斎藤育・和田未莉奈
イラスト/清水菜央